僅かな距離

「月島?」

もう一度呼ばれる。

陽依ははっと我に返った。

「……はい。」

「職員室まで来れるか?」

月城は穏やかな声で言った。

特別なことを言っているわけじゃない。

周りから見れば、ただ担任が生徒に用事を頼んでいるだけ。

それなのに。

陽依の胸は苦しくなる。

どうしよう。

頭の中で警報みたいに同じ言葉が鳴り続ける。

どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。

行かなかったら。

また何かされるかもしれない。
写真を使われるかもしれない。
噂を流されるかもしれない。

でも、今ここで月城を断ったら
本当に最後の機会を失う気もした。