僅かな距離

下駄箱の前で、陽依は動けなかった。

切り裂かれた上履き。

何本も走る鋭い傷。

悪意だけが、そこに残されていた。

周りを見渡す。

誰もいない。

だけど、どこかで見られている気がした。

笑われている気がした。

陽依は震える手で上履きを取り出し、
誰にも見られないように鞄へ押し込んだ。

そして、そのまま帰った。

誰にも言わずに。