僅かな距離

その頃。

階段を上っていた月城は足を止めていた。

ほんの数秒前。

背後から何か聞こえた気がした。

小さな声。

風の音だったのかもしれない。

聞き間違いだったのかもしれない。

それでも。

胸の奥がざわついた。

月城は振り返る。

下の踊り場までは見えない。

壁が邪魔をしている。

当然だ。

聞こえたとしても内容なんて分からない。
なぜか嫌な予感だけが消えなかった。