僅かな距離

けれど。

本当はずっと苦しかった。
誰かに気づいてほしかった。
大丈夫じゃないことを。

平気なふりをしているだけだということを。

誰かに。

たった一人でいいから。

気づいてほしかった。

陽依はゆっくり目を開ける。

窓の外では夕焼けが少しずつ色を失い始めていた。

校舎の影が長く伸びる。

今日も終わろうとしている。

何も変わらないまま。
何も解決しないまま。

そう思った、その時だった。

階段の上から微かな音が聞こえた。

誰かが立ち止まったような音。

陽依は顔を上げる。

けれど何も見えない。

気のせいかもしれない。

そう思った。
だが胸の奥に妙な違和感だけが残った。