僅かな距離

足音はゆっくりと階段を上がってきていた。

一定のリズムで響くその音が、静かな階段の中でやけに大きく聞こえる。

陽依は慌てて目元を拭った。

誰かに泣いているところを見られたくなかった。

今だけは。
誰にも。
絶対に。

足音はさらに近づいてくる。

陽依は俯いたまま階段を下りた。

早く通り過ぎたい。
何事もなかったように。
普通の顔をしてそう思った。

けれど、
踊り場を曲がった瞬間、陽依の足は止まった。