僅かな距離

陽依は言葉を失った。

階段の踊り場に吹き込む風が、やけに冷たく感じる。

耳の奥では自分の心臓の音だけが大きく響いていた。

ドクン。

ドクン。

苦しいほど早く脈打っている。

女子たちは返事を待っていた。

まるで面白い答えを期待しているみたいに。

陽依は唇を強く噛んだ。

「違う。」

ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほど小さかった。

「違います。」

もう一度言う。

今度は少しだけ強く。

そう言わなければいけない気がした。
否定しなければいけない気がした。