僅かな距離

やめてほしい。
聞きたくない。

なのに耳を塞げなかった。

「先生って優しいよね。」

女子はそう言って笑った。

「だから期待しちゃうんだろうけど。」

その言葉に。

陽依の拳がぎゅっと握られる。

期待。

その言葉だけは聞きたくなかった。

自分が一番分かっているから。

期待してはいけないこと
期待すると苦しくなること

それでも、
心のどこかで期待してしまっていることを。

女子はそんな陽依の表情を見て、満足そうに笑った。

そして静かに言う。

「ねぇ、月島。」

その声は今までで一番冷たかった。

「本当に先生のこと好きじゃないの?」

陽依の顔から血の気が引いた。