僅かな距離

「無理するなよ。」

たった一言だった。

それだけだった。
それなのに。

陽依の胸の奥で何かが大きく揺れた。

今まで必死に押さえ込んでいた感情が、少しだけ溢れそうになる。

助けてほしい
苦しい
怖い

そんな言葉が喉元まで込み上げてくる。

けれど。

陽依は小さく頷くだけだった。

「……はい。」

それしか言えなかった。

それが精一杯だった。

そして陽依は再び歩き出す。

放課後まで、あと数時間。

だけどその数時間が、今の陽依にはとてつもなく長く感じられた。
放課後になれば、またあの場所へ行かなければならないからだった。

屋上へ続く階段。
誰もいない場所。

そして。
自分を待っている人たちのところへ。