仲間と私で未来を紡ぐ

次の日、人里完成の報告を花幻郷全体にすると、人里への移住の殺到が花幻郷最強グループを襲った。
花韮丘の近くであり、花幻郷最強の人々が近くに住んでいるというのも理由の一つかもしれない。
しかし、それよりも多かったのが、ちゃんはち達の力になりたいというもの。
異変解決した際に救ってきた命が、こんなにも大きくなると皆は知らず、正直驚いた。
__その背景には、救えぬ命もあったから。
そんなこんなで、ちゃんはち達は新たに宿を作り、子持ちの方々も多かったことから子供が教育を受けれるような場所、それに加えて店も新たに増設した。
様々な対応に始まり異変解決も同時に行うのは流石のちゃんはちも疲れたようで、夜になると死んだように寝て気づいたら朝になる、ということが毎日のように起こっていた。
ちゃんはち疲れを癒しているのは。

「やっほー!今日もきたよ!」
「あら、いらっしゃませ〜!今日は限定クッキーも売っておりますので、ぜひご覧ください!」

そう、限定クッキーである。
限定クッキーとは、八百屋の店長が作った数量限定のとても美味しいクッキーのこと。
それを売っている八百屋が、この人里にやってきたのだ。
八百屋の店長の名は貸屋木ひとえ。茶髪のボブヘアーに茶色のワンピース。可愛らしいベレー帽をかぶったその容姿から人里中で気に入られている女の子である。

「ほんと!?やったぁぁ!!じゃあ限定クッキーいくつか買っていくね!」
「いつもご利用ありがとうございます!そして、今日は何をお買い上げになられるのですか?」
「えっ…と、今日はカレーを作るらしいからそれの材料と、あと…」

ちゃんはちはやさに託されたメモをポケットから引っ張り出して、書いてある食材たちをどんどんカゴに入れていく。
少食が多いが、食べる人はよく食べる。人数も多いちゃんはち達の家の食費はかなりかかる。それに、買い物に行ったときの食材の量はバカにならない。
だからか、買い物は誰もやりたがらないため、当番制になっている。
だが、今日の当番はいかり。なぜちゃんはちがきたのかというのは…言わなくてもわかるだろう。
当番制だが、代わりたいものがあれば代わった良いというゆるゆるな制度のため、ちゃんはちは限定クッキー販売日は率先して買い物担当をしているのだ。
今日も、カゴ三つ分の食材と六つの限定クッキーををレジに持って行く。

「ありがとうございます。じゃがいもが三十点、にんじんが十点…」

貸屋木は、テキパキとカゴに入ったたくさんの材料を会計していく。
その手際の良さも、この八百屋が人気の秘訣だ。
ちゃんはちは、その様子をニコニコしながら見守る。
会計の金額はいつものようにかなり高値だが、爆買いしている割には安い。
中枢郷で買ったらもっと高いんだろうなぁと考えながら、ちゃんはちは財布から金を出す。

「はい、これ」
「ちょうどお預かりいたします。レシートはご利用なさいますか?」
「うん、いるいる!」
「ではこちらお品物とレシート失礼します。ご来店ありがとうございました!またお越しください!」
「いつもありがとうね。これ、一つどうぞ」

そう言いながら、ちゃんはちは貸屋木へ限定クッキーを一つ渡す。

「よ、よろしいのでしょうか!?」
「うん、いつものお礼だよ!これからもよろしくね!」
「はい!ありがとうございます!!」

貸屋木は、年相応な笑みを浮かべてちゃんはちを見送った。
貸屋木は、ようやく十の位に数字を刻んだ歳なのだ。

(あの歳で店主かぁ。私は年齢的には十六だけどここにいた年を加えたら…え?あと四年ぐらいで三十路?嘘でしょ?)

ちゃんはちは頭を振り、今考えたことを頭からなくす。
たとえ身体的に年齢が止まろうが、冷静に考えた歳には勝てない。
ちゃんはちはしょぼしょぼとした顔をしながら、近道をしようと路地裏に歩みを進める。
人の声も届かぬほどの場所まで歩いたとき、ふと花韮の年齢が頭をよぎった。

(…てか花韮とか一万年ぐらい生きてるから、そう考えるとめちゃめちゃおばさんだな…)

そう思考が駆け巡った瞬間、ちゃんはちの目の前に黒いローブを見に纏った人間が姿を表す。
ちゃんはちは驚きのあまり言葉が出なかった。
それに、ちょうど両手も塞がっている。
完全に思考が遅れてしまった。
目の前にいる人間は、片手をちゃんはちに向ける。

「『失雷《ルーズサンダー》』」

そう言うと、向けられた手のひらに黄に輝く魔法陣が出現し、そこから小さな雷が出てくる。
ちゃんはちはなんとか避けようと身をよじったが、雷はちゃんはちの首に吸い込まれるかのように突撃してきて。
悲鳴もあげられぬまま、ちゃんはちはその攻撃をモロに受けてしまう。
電気がビリビリと音を立てながら身体中を駆け巡る。
やがてそれが落ち着くと、ちゃんはちの体は力無く地面に叩きつけられた。
買ったばかりの食材が、地面に転がる。
黒いローブを身に纏った人間は、ちゃんはちの腕を掴むと親指と人差し指を重ねて擦り、パチンと鳴らす。
その音と同時に、ちゃんはちと人間の姿は跡形もなく消えた。