花幻山のどこか。
人も動物も寄りつかないぐらい静かで暗い洞窟の中を、ちゃんはちは歩く。
少し歩くと、何かを乗せられるような石像のようなものが三つ見えてきた。
大中小の形があるが、どれも崩れていて事情がわかるものしか石像と判断できないだろう。
「ようやく見つけた…。マジで分かりにくいんだよここ」
ちゃんはちはそう呟きながら、地面に転がる石を持っては投げ持っては投げる。
いい感じの大中小三つの大きさの石を見つけると、それを持ってまた石像の前に立つ。
そして、大きい石像には大きい石を乗せ、中くらいの石像には中くらいの石を、小さい石像には小さい石を乗せる。
すると。
石像は光り輝き、目の前の石の壁に切れ込みが入った。
ここに呪文を唱えれば、この石の壁が動いて博士に会える。
「……………」
ちゃんはちは、誰もいないのに誰にも聞こえない…いや、聞こえさせないような小さな声でブツブツと呪文を唱える。
すると、目の前の石の壁がまるで扉になったかのように動き、中にある空間を露わにした。
階段もない丸い廊下のような空間が、下方に向かって斜めに確かに存在する。まるで階段がそこにあるかのように。
ちゃんはちは呆れ顔でため息を吐き、その中へと歩みを進める。不思議と転がることなく普通に歩ける。まるで異空間へ迷い込んだようだ。
廊下の最初は洞窟のようなゴツゴツとした石の壁が続いたが、だんだんと白くしっかりとした壁に変わり、さらに歩くと金属が嵌められたメカメカしい壁へと変わった。耳を澄ませると、どこからか機械音が聞こえてくる。
廊下を渡り終えると、広い空間に出た。
しかし、八割が機械で埋め尽くされ、残りの二割の床には資料や部品が散らばっており足の踏み場もない状況。
そんな空間の中、博士とおもしき人物は床に座り込んで紙に何かを書いて書いて書いているようだ。
ちゃんはちはパワーボールを創ってそれに乗り込み、その人物の近くに行く。
「…博士」
「んー?あぁ!はっはー!これはこれはちゃんはちクンじゃないかい!?いやぁ相変わらずキミはこの博士をゴミのような目で見るねぇ。ま、そういうところもキミのアイデンティティでもあるのかな?ん?」
一つの呼びかけに百で返してきた博士と呼ばれた人物は、白衣こそ着ているが煤だらけのボロボロ。
しかし、エメラルドグリーンの髪は異様に美しい。手入れを念入りにしているのか、サラサラでいい匂いまでする。
肩まであるそれは、顔立ちのいい博士をより美し、煌びやかになびいていた。
一際美しい碧色の瞳は僅かに緩み、女神のような微笑をしている。
おそらく目の前にいるのがちゃんはちでなければ、あるいは博士の性格を知らなければ。美しい博士にのぼせ上がっていたかもしれない。
しかし、ちゃんはちと博士は長い間柄。
今の博士の表情だって、ちゃんはちからしてみれば次の言葉を楽しみに薄気味悪く笑っているようにしか見えなかった。
ちゃんはちは目を細めながら要件を言う。
「博士は相変わらずうるさいね。ちょっと欲しいものができたから、急だけど用意して欲しいんだけど…できる?」
「はいはいいいよぉ。で?何が欲しいんだい?」
顔を近づけて喋る博士から離れるようパワーボールを操作して、続きの言葉を放つ。
「新しい仲間ができたの。その子用の情報共有機器と、大きめの家をすぐに建てられる機械みたいなのない?」
「そんなの、このパラドカコウィー・サピエンアモル(No.16151111 機器陶酔)に任せればすぐに用意してあげるよ!」
「…本当にその名前どうにかならないの?」
「ならないねぇ。なにせこの美しく可憐で凛々しい名前は博士の本名だからねぇ。ところでこの会話をするのは何回目だい?」
「多過ぎてわからないって前も言ったじゃん」
そうだったかい?といいながら、博士__パラドカコウィーは、機械の最終調整やら安全確認やらを始める。
情報共有機器とは、花幻郷最強グループメンバー全員に配られているチップのこと。
グループメンバー間で情報共有ができたり、遠征や異変解決の依頼が届いたりする優れもの。
とても小さいため、ちゃんはちたちは脳の中にそのチップを埋め込んでいるのだ。
パラドカコウィーは、手を動かしながらちゃんはちに話しかける。
「ちなみに、この情報共有機器にアップデートが入ったんだよぉ」
「アップデート?」
「その内容はズバリ!遠隔からでも操作可能にしたんだ!これで博士のところにわざわざ来なくても、こっちで適当にアップデートをしたら自動でキミ達の機械がアップデートされるんだよ。どう、画期的じゃないかい!?」
「いやアップデートするために来たわけじゃないけど、まぁ画期的…なのかな?」
「その他にも博士の作った新しい機械の情報が最速でキミ達に__」
「あ、それは要らないかも」
「もう。キミは相変わらず冷たいねぇ。」
すると突然、パラドカコウィーはなにかを思い出したかように目を見開いてちゃんはちの方へと顔を向ける。
「そういえば、土産話はないのかい?」
「ないよ。"前回"は検証だけに使ったからね。」
「そうかそうかぁ。で、進捗は?」
「ほどほどだよ。でも、"今回"で行けたら行けるかもね。」
「そうかい。…ねぇ。少し意地悪な質問をするけけれど、キミは、事が終わった後のことを考えているのかい?」
「…」
質問に答えないちゃんはちのことを責めるでもなく慰めるでもなく、パラドカコウィーは淡々と作業を進めた。
あれやこれや作業したら、両手に何かを持ってちゃんはちの方に体を向ける。
「はい。小袋の中に入っているのが情報共有機器だねぇ。で、こっちは家をつくるキット。急遽作ったから、不具合があったらまた来てねぇ」
「え、もうできたの!?」
「うん。いやぁ博士は最強だからねぇ!あ、最強はキミの方かぁ、たはは」
はい、とパラドカコウィーは両手を差し出す。
ちゃんはちは差し出された二つの機械を受け取る。
「ありがとう博士!」
「感謝をするなら本名で呼んでくれないかい?」
「それはごめん、できないわ」
「えぇー。まぁいいや。で、またこの流れをやる予定はあるかい?」
「だからさっきも言ったでしょ?もしかしたら今回で終われるかもって。」
「あーそうだったねぇ。すっかり忘れてたよ」
そんなやり取りを終えると、ちゃんはちは後ろを向いて帰ろうと一歩踏み出す。
「__次お会いするときは、良き報告が聞けることを期待していますよ。花幻郷最強様。」
異様に冷たいような、それでいて何かを秘めたように優しい声色。
その言葉に返事をしないまま、ちゃんはちは廊下へと戻ってしまう。
「…もう。相変わらず冷たい人ですよ。キミは。」
その呟きは、ちゃんはちにも聞こえないくらい小さなものだった。
人も動物も寄りつかないぐらい静かで暗い洞窟の中を、ちゃんはちは歩く。
少し歩くと、何かを乗せられるような石像のようなものが三つ見えてきた。
大中小の形があるが、どれも崩れていて事情がわかるものしか石像と判断できないだろう。
「ようやく見つけた…。マジで分かりにくいんだよここ」
ちゃんはちはそう呟きながら、地面に転がる石を持っては投げ持っては投げる。
いい感じの大中小三つの大きさの石を見つけると、それを持ってまた石像の前に立つ。
そして、大きい石像には大きい石を乗せ、中くらいの石像には中くらいの石を、小さい石像には小さい石を乗せる。
すると。
石像は光り輝き、目の前の石の壁に切れ込みが入った。
ここに呪文を唱えれば、この石の壁が動いて博士に会える。
「……………」
ちゃんはちは、誰もいないのに誰にも聞こえない…いや、聞こえさせないような小さな声でブツブツと呪文を唱える。
すると、目の前の石の壁がまるで扉になったかのように動き、中にある空間を露わにした。
階段もない丸い廊下のような空間が、下方に向かって斜めに確かに存在する。まるで階段がそこにあるかのように。
ちゃんはちは呆れ顔でため息を吐き、その中へと歩みを進める。不思議と転がることなく普通に歩ける。まるで異空間へ迷い込んだようだ。
廊下の最初は洞窟のようなゴツゴツとした石の壁が続いたが、だんだんと白くしっかりとした壁に変わり、さらに歩くと金属が嵌められたメカメカしい壁へと変わった。耳を澄ませると、どこからか機械音が聞こえてくる。
廊下を渡り終えると、広い空間に出た。
しかし、八割が機械で埋め尽くされ、残りの二割の床には資料や部品が散らばっており足の踏み場もない状況。
そんな空間の中、博士とおもしき人物は床に座り込んで紙に何かを書いて書いて書いているようだ。
ちゃんはちはパワーボールを創ってそれに乗り込み、その人物の近くに行く。
「…博士」
「んー?あぁ!はっはー!これはこれはちゃんはちクンじゃないかい!?いやぁ相変わらずキミはこの博士をゴミのような目で見るねぇ。ま、そういうところもキミのアイデンティティでもあるのかな?ん?」
一つの呼びかけに百で返してきた博士と呼ばれた人物は、白衣こそ着ているが煤だらけのボロボロ。
しかし、エメラルドグリーンの髪は異様に美しい。手入れを念入りにしているのか、サラサラでいい匂いまでする。
肩まであるそれは、顔立ちのいい博士をより美し、煌びやかになびいていた。
一際美しい碧色の瞳は僅かに緩み、女神のような微笑をしている。
おそらく目の前にいるのがちゃんはちでなければ、あるいは博士の性格を知らなければ。美しい博士にのぼせ上がっていたかもしれない。
しかし、ちゃんはちと博士は長い間柄。
今の博士の表情だって、ちゃんはちからしてみれば次の言葉を楽しみに薄気味悪く笑っているようにしか見えなかった。
ちゃんはちは目を細めながら要件を言う。
「博士は相変わらずうるさいね。ちょっと欲しいものができたから、急だけど用意して欲しいんだけど…できる?」
「はいはいいいよぉ。で?何が欲しいんだい?」
顔を近づけて喋る博士から離れるようパワーボールを操作して、続きの言葉を放つ。
「新しい仲間ができたの。その子用の情報共有機器と、大きめの家をすぐに建てられる機械みたいなのない?」
「そんなの、このパラドカコウィー・サピエンアモル(No.16151111 機器陶酔)に任せればすぐに用意してあげるよ!」
「…本当にその名前どうにかならないの?」
「ならないねぇ。なにせこの美しく可憐で凛々しい名前は博士の本名だからねぇ。ところでこの会話をするのは何回目だい?」
「多過ぎてわからないって前も言ったじゃん」
そうだったかい?といいながら、博士__パラドカコウィーは、機械の最終調整やら安全確認やらを始める。
情報共有機器とは、花幻郷最強グループメンバー全員に配られているチップのこと。
グループメンバー間で情報共有ができたり、遠征や異変解決の依頼が届いたりする優れもの。
とても小さいため、ちゃんはちたちは脳の中にそのチップを埋め込んでいるのだ。
パラドカコウィーは、手を動かしながらちゃんはちに話しかける。
「ちなみに、この情報共有機器にアップデートが入ったんだよぉ」
「アップデート?」
「その内容はズバリ!遠隔からでも操作可能にしたんだ!これで博士のところにわざわざ来なくても、こっちで適当にアップデートをしたら自動でキミ達の機械がアップデートされるんだよ。どう、画期的じゃないかい!?」
「いやアップデートするために来たわけじゃないけど、まぁ画期的…なのかな?」
「その他にも博士の作った新しい機械の情報が最速でキミ達に__」
「あ、それは要らないかも」
「もう。キミは相変わらず冷たいねぇ。」
すると突然、パラドカコウィーはなにかを思い出したかように目を見開いてちゃんはちの方へと顔を向ける。
「そういえば、土産話はないのかい?」
「ないよ。"前回"は検証だけに使ったからね。」
「そうかそうかぁ。で、進捗は?」
「ほどほどだよ。でも、"今回"で行けたら行けるかもね。」
「そうかい。…ねぇ。少し意地悪な質問をするけけれど、キミは、事が終わった後のことを考えているのかい?」
「…」
質問に答えないちゃんはちのことを責めるでもなく慰めるでもなく、パラドカコウィーは淡々と作業を進めた。
あれやこれや作業したら、両手に何かを持ってちゃんはちの方に体を向ける。
「はい。小袋の中に入っているのが情報共有機器だねぇ。で、こっちは家をつくるキット。急遽作ったから、不具合があったらまた来てねぇ」
「え、もうできたの!?」
「うん。いやぁ博士は最強だからねぇ!あ、最強はキミの方かぁ、たはは」
はい、とパラドカコウィーは両手を差し出す。
ちゃんはちは差し出された二つの機械を受け取る。
「ありがとう博士!」
「感謝をするなら本名で呼んでくれないかい?」
「それはごめん、できないわ」
「えぇー。まぁいいや。で、またこの流れをやる予定はあるかい?」
「だからさっきも言ったでしょ?もしかしたら今回で終われるかもって。」
「あーそうだったねぇ。すっかり忘れてたよ」
そんなやり取りを終えると、ちゃんはちは後ろを向いて帰ろうと一歩踏み出す。
「__次お会いするときは、良き報告が聞けることを期待していますよ。花幻郷最強様。」
異様に冷たいような、それでいて何かを秘めたように優しい声色。
その言葉に返事をしないまま、ちゃんはちは廊下へと戻ってしまう。
「…もう。相変わらず冷たい人ですよ。キミは。」
その呟きは、ちゃんはちにも聞こえないくらい小さなものだった。
