「もうそういうの、やめて下さい。迷惑です。」
「いやだ。」
再び私の腕を取る部長が、いつでも逃げ切れるほどの力で拘束する。
引き留めようとしているのか、私に能動的に立ち止まらせようとしているのか。分かりたくもない。
「楢崎課長への配慮はあるのに、私への配慮は一切ありませんよね?」
「それはお前も同じだろ。」
「私は、婚約者がいるのに色んな女性と遊んでいる考え方は理解できません。」
「全部てめぇを煽るためだ。」
「ええ、そのお陰で私は十分煽られてますよ。満足ですか?」
部長の大きな手が、私の後頭部を拘束する。
私の唇の中を占領するかのように、部長の舌先が口内で暴れる。
「ん―ッ―――」
後ろから腰を掴まれた。もう片方の手で後頭部を強く掴まれたまま、舌をズズっと吸われながら歯列をなぞられる。
苦しい。もがけばもがくほどに。
大人しく、彼の手の内に堕とされてしまった方がいっそ楽なのかもしれない。
そう思わせられるほど好きでいることが、辛い。
「振り向かせるためにお前を煽って何が悪い?」
「あっ……ん、まっ、」
「ほら、今度はお前の番。俺の舌を吸え。」
そんなの、やり方を知らない。
手で押し返そうにも、身体が密着しすぎていてやりようがない。
抵抗しようと彼の腕に掴みかかれば、背中で交差されて、力強く拘束される。
部長の熱い舌が何度も私の舌を絡め取る。
パンツスーツの間に差し込まれた部長の膝に、未知の熱を感じた。
「俺のが吸えないなら、吸わせるまで――」
歪な耳の形を指でなぞられて、さっきまでの憤りが溶かされていく。
頭が働かない。
気付けば部長の舌を、必死に絡め取っていた。
「わ、私を煽った責任、どうしてくれるんですか?」
「俺が可愛がってやる。」
消えかかりそうな電灯が一つ、消えていた。



