破断直後のEt cetera


 仕事が終わって、吉香とは玄也さんのお店で直接待ち合わせをした。

 カウンターに座って、ビール2つとハマグリのバターソテーを頼み、乾杯したところで十二村製薬の常連客がやって来たのだ。

 まさかな、と軽く考えていたら、本当に十二村部長と楢崎課長が暖簾をくぐって入って来た。


「……おい。どういうことだ楢崎?」

「大路さんがね、今日ビール半額だって言ってたから。そういえばこの居酒屋も今週、半額イベントやってたなあと思ってね。」


 カウンター席で後ろを振り返れば、眉間にシワを寄せて、面倒くさそうに私を見つめる十二村部長の姿があった。私も今まさに同じ顔をしているに違いない。



 楢崎課長の機転の利かせた対応により、4人でテーブル席に座ることになった。

 吉香には始終、肘で腕を突かれている。


「へえ〜。玄也さんて、大路さんちの家政婦さんの息子さんだったんだ。というか大路さんち、家政婦さん雇ってるなんて凄いね。」

「ま、まあ。一応これでも私、オージスの令嬢なんで〜。」

 
 私がビールジョッキ片手に頭を掻けば、楢崎課長に笑われてしまった。

 そして十二村部長が私を見下すようにしてつぶやく。


「ビールジョッキ持った令嬢なんてお前くらいだろ。しかもほぼ飲み切ってるしな。」

「いいじゃないですか! 今日は半額なんですよ? 飲めるだけ飲んでおかなきゃ。」

「飲みすぎて店で騒いでも俺達は関与しないからな?」

「わ、分かってますよ!」

「玄也さんも玄也さんのお母さんも、とんだ令嬢をつかまされたもんだ。」

「ハイハイうるさいですって。」


 このお店は店主さんの名前通り、『玄也』と本名で看板を掲げている。そのせいか常連さんは皆、店名に“さん”付けをした名前で、この居酒屋を呼んでいた。

 私たち3人が同じ会社のため、あまりアウェイにならないようにと、楢崎課長が率先して吉香に話を振ってくれている。

 でも吉香の対応は氷河期だ。
 
 2人で飲むはずだったのにいきなり乱入者が現れて、さすがに怒っているのだろうか? ごめんね、吉香。
 

「……私は十二村製薬の人間じゃないんで、はっきり言わせてもらいますけどね。十二村さん、あなたよくもまあ未怜の前に堂々と顔を出せたもんですね!」


 どうしよう、吉香が完全にキレている。こんな形での修羅場は、本当に玄也さんに迷惑をかけてしまうんじゃないだろうか?

 居心地が悪くなる前に、とりあえず吉香を止めようと試みる。


「吉香! いいから! この人、一応十二村製薬の御曹司だから!」
 
「十二村さん、あなた鬼ですか? 未怜がどれほどの思いでいたかも知らない癖に、コミュニケーションも取らず、一方的に婚約解消までして、今こうして普通に未怜の前にいるのが信じられません!」


 吉香がジョッキの底を叩きつけるようにテーブルに置く。

 私が慌ててなだめるも、目の前の十二村部長は冷静そのものだ。