破断直後のEt cetera





 赤堀部長がアメリカの出張から帰宅してからは忙しない日々となった。

 グローバル部のミーティング資料に事業計画書にと、私はパソコン画面とにらめっこの日が続いていた。

 デスクの卓上カレンダーには今月のタスクをびっしりと、全て赤文字で記載している。どれも主張が激しい太文字で、一体どれが一番重要なタスクなのか分からない。

 秘書業務だからと侮るなかれ、部長や課長のサポート業務は思った以上の負荷が課せられる。

 特に今は、先日私が翻訳した、ボストンにある総合病院の研究論文記載事項を実現できるのか、現場の研究員と開発員が試されている時期だ。

 秘書である天王寺さん、檜佐さんが交代で部長の外回りに同行する中、私は片手で過去の資料を読み込みながら、今年度の資料を作成していた。


「大路さん、忙しいところ悪いんだけど、急遽IV化学との商談が入ったんだよ。今から一緒に会議室で資料をまとめるのを手伝ってくれる?」

「わ、分かりました!」


 楢崎課長に呼ばれて、慌てて作成画面を保存する。
  
 原料を扱う化学薬品メーカー、IV化学は外資系企業だ。今急いでネットで調べた。

 事前に売り込みでIV化学から送られてきていた原料規格書と、その原料で作られる当社製品の規格書を照らし合わせて楢崎課長と確認する。

 資料とファイル一式を抱えて、課長と3階にある会議室に向かうため、エレベーターに乗り込んだ。


「グローバル部は常に仕事を中断させられるから大変でしょ。」


 楢崎課長が、疲れた表情を見せながらも、さり気なく私の持っていたファイルを持ってくれる。

 確かに、営業本部の秘書課では、こんな風にしょっちゅう仕事を中断させられることはなかった。 

 常にメモを取りスケジュール管理をしておかないと、自分のやるべき仕事を忘れてしまいそうだ。一秒たりとも気が抜けない。