吉香との帰り道。
繁華街の通りを2人でふらふらしている時だった。
吉香があまりに足元がおぼつかないもんだから、私が吉香の手を引いて、なぜかそのまま手をつないで駅まで歩いた。
これも女子校のノリかもしれない。
26歳になった私たちは、中学からの長い付き合い。
大学は違うにも関わらず、吉香とは定期的に会って色々な話をしてきた。
社会人になってもこうして付き合いがあるなんて思いもしなかった。
友達といるのが一番楽しい。
改めてそんなことを感じていた。
繁華街の通りから、やたら背の高い男性が裏道へと入って行く。
その後ろ姿には見覚えがあった。毎日見ているロングコートなのだから、当たり前なのかもしれないけれど。
「……詩太さんだ。」
「え? どれ?!」
「あれ」
詩太さんの隣には、知らない女性がいるのが見える。
「嘘でしょ。あれって、手つないでない?」
酔って幻覚でも見ているのかと思ったけれど、吉香も同じものが見えているということは私の見間違いではないらしい。
やっぱり、あれって、どう見ても手をつないでいる。
胸の奥底から、色々な感情があふれ出す。
「ねえ、あのさあ未玲。きっと2人の行方を追ってもさあ、いいネタは生まれないって、」
「あの裏道って、確かラブホ街だったよね。」
「……」
追うことも考えたけれど、私が追ったところでどうにも出来ないことは分かっていた。
悔しい、悲しい、辛い、苦しい。
早く諦めちゃいなよ。そしたら次の恋にいける。
目頭に力がこもる。泣くな……泣いたらきっと負け。
「世の中のさ、婚約を勝手に決められた人たちを……尊敬するよ。きっと色んな我慢を乗り越えているんだと思う。」
その乗り越えた先に、幸せな未来は待ってるの? それとも――――
ネットで何度も調べてきた『婚約者がいる男性』の現実は、本当に心臓をえぐられるほどの内容で、でもそれは詩太さんには絶対に当てはまらないものだと信じて疑わなかった。
そう。ネットには、婚約を決められているからこそ、遊べるうちに遊んでおく男性が多いというものだった。
ネットの世界がファンタジーなんじゃない。私の頭の中身がファンタジーだったのだ。



