「つぅか、グローバル部でやらかすなよ? てめぇが何かミスをすれば、俺の教育が悪いと思われる。」
「はいぃ?! 私はあなたに教育されたことなんて一度もありませんけど?!」
「それと、札幌出張の件は悪かった。どうやら俺が高坂に伝え間違えてたらしい。」
「そらみろ、そうでしょうよ! 札幌と大阪を間違えるなんてどうかしてたるんじゃないですか?! 東と西ですよ?!」
「ああ。俺がどうかしていた。残業と接待続きで頭がごちゃごちゃになっていた。」
急にしおらしくなる部長に、今の今まで沸騰していた熱が冷め始める。
さすがに面食らってしまう。常に上から目線の部長が、こんなに素直にミスを認めるなんて。
拍子抜けというよりも、少しだけキュンときた。
「……なんだ? なんでそんなバカ面で俺を見ている?」
「いや、詩太さんでも素直になることがあるんだな〜と思って。」
「……」
大概自分も嫌な性格だなと自得する。わざと嫌味ったらしく、口角を上げて鼻で笑ってやった。
恐らく百倍返しでくる罵倒を、どこから来てもいいように戦闘態勢に入る。
でも部長からの仕返しは一向になく。それどころか、みるみる顔が赤く染まっていく。
「ぶ、部長……?」
「な、なぜ今名前で呼ぶ?! 次名前で呼んだらビルの屋上から突き落とすからな!」
「は、はい?!」
『突き落とす』って、物騒とはいえまるで小学生のような返しだ。
私の口が開きかけてしまえば、部長が腕で顔を抑えて階段を下りて行ってしまう。
(なにあれ……。)
なぜだか自分の顔も熱くなる。今の部長を、“かわいい”と言わずしてなんと言おうか。
(ギャーギャー、詩太さんが、かわいい!?)
胸をの奥とぐっと掴まれて、今世紀最大のキュウンをもたらす。
今のは反則だ。予期せずして“かわいい部長”を見せつてくるなんて、これじゃあ午後は仕事になりそうにない。
(ベッドの上では私に『詩太さん』って強引に呼ばせた癖になあ。)
スマホを取り出し、詩太さん似の韓国アイドルを拝んでから仕事に戻った。



