「おいそこのドアを閉めろ。」
「…………」
返事を返すつもりだったのに、なぜか返事が上手く口から出なかった。
渋々ドアを閉めると、十二村部長が奥のデスクに座って、新聞をソファテーブルに叩きつける。
(し、信じられない……。話があるって呼び出しておきながら、ソファに座らずデスクに座る?!)
あまりの動作に嫌気が差すも、その新聞にはオージスに関する記事が載っていた。
『株式会社オージス 新事業参入へ前進』
自分の血の気が引いていくのを感じた。
まさか、お父さんの会社のことで何か話があるということだろうか? こっちから話をするつもりだったのに、まさか十二村部長から先制攻撃をして来るつもりなのだろうか?
同じように医薬品を扱う同業種となるからなのか。お父さんの会社のことを咎められるのではと身構えた。
「オージスはアメリカのジェネリックメーカと手を組んで新規参入するそうだな。」
「は、はい。」
「それならもう十二村製薬との繋がりを持つ必要もないだろう。」
「は、はあ。」
何を言われるのかと思っていたら、そのことか、とほっと胸を撫で下ろす。
でもその後に続く言葉まではすぐに予知出来なかった。
「婚約は解消だ。俺達が結婚する意味がまるでない。」
「え……」
「別に結婚したところで何一つ利点はない。破棄だ破棄。」
「は――――」
待って、待て待て待て、待って! その言葉、私から言う言葉――――
「話はそれだけだ。戻れ。」
な――!! それだけ?! それで終わりなの?! どうやって両親揃って話を詰めるとか、そういう話も全部割愛?!
頭の中で沸騰したガソリンはすでに煮えたぎっていて、今にも爆発しそうな状態だった。
瞼の裏に力がこもり、自分の両拳が震える。



