婚約者の詩太さんに恋をしたのは、初めて詩太さんに会った日だった。
ブルーブラックのさらさらな髪。高校生ながらに色香をまとう紫がかった切れ長の瞳。
鼻が高く、脚が長い。服のセンスも落ち着いている。
入口はパーフェクト。こんなにキラキラした男性、生まれて初めて見た。
私の未来への階段が、一気に華やいだ。
『は、初めまして。大路未怜と申します。』
4歳年上の彼に失礼がないようにと、人見知りながらに必死で目を合わせた、14歳の冬。
すでに18歳だった詩太さんが、深いタメ息を吐く。私を一瞥したきり、すぐに視線を反らした。
『へえ。』
たったそれだけ。
挨拶も、身も蓋もない一言。
それだけで私たちのファーストコンタクトは完結した。
感想はショックというか、まあ、そうだろうなという感じ。
だって私たちはまだ10代。自分たちの意思など関係なく決められた婚約。
女子校に通う、まだ恋を知らなかった私はいいとして、詩太さんは共学に通う高校3年生。すでに彼女くらいいるかもしれないし、受験が終われば楽しい大学生活が待っている。
それなのに、私という『しがらみ』があるせいで、彼の順風満帆な未来は掻き消されてしまうのだ。
4歳年下だし、相手にされないのも無理はない。



