陰日向に咲く儚花


バックルームに入り、ステーショナリーの在庫が保管されている場所を覗くと、A4コピー用紙の在庫を見つけた。

(やっぱりまだあった。でも、また発注しておかなきゃなぁ。)

そう思いながら、わたしは台車を持って来て、それに乗せて運ぶ為にコピー用紙の在庫を持ち上げようとした。
しかし、一冊500枚入りのコピー用紙が5冊段ボールに入れられた箱はかなり重たく、台車に乗せるのにかなり苦労した。

(重たっ······!)

すると、わたしの横からスッと長い腕が伸びてきて、わたしが抱えるコピー用紙の箱を意図も簡単に台車に乗せてくれる存在が現れた。

わたしは驚き、腕が伸びてきた方に顔を向け、ふと見上げた。

そこには、長身に程よく灼けた肌に白いYシャツが映える見た事のない男性が立っていた。
薄暗いバックルームでも分かる程の綺麗な茶色い瞳に鼻筋の通った美形な顔立ち。

わたしは驚きのあまり一瞬言葉を失っていたが、ふと我に返り、慌てて「あ、ありがとうございます。」とお礼を言った。

「いえ、これは女性が持つような重さじゃないですよね。売場まで運びますよ。」

男らしさの中にも優しさを感じる穏やかな声。

(イ、イケメンボイス······)

そしてわたしは、その男性の首から下がる社員証に気が付いた。
そこには『ホームファッション主任 日向(ひなた)』と書かれていた。

(この人が新しいホームファッションの主任なんだ。)

「あっ!いえ、申し訳ないです!わたしがやるので大丈夫です!」
「気にしないでください。これくらいすぐなので大丈夫ですよ。置く場所、教えてもらえますか?」

そう言って、日向主任はコピー用紙の箱を3箱乗せた台車を押し始めた。

わたしは申し訳なく思いながらも日向主任に売場までコピー用紙を運んでもらう事にしたのだった。