そんな中、自宅に帰ってもわたしには休む時間など無かった。
竜介は、料理や洗濯は勿論、ゴミ捨てや食べた食器の片付けすらしなかった。
家計については、家賃は払ってくれるものの、わたしが働いているからと、その他の生活費は3万円しか渡してくれず、足りない分はわたしの給料から補い、わたしに残るお金はほぼ無いに等しかった。
そのくせ、夜の誘いに容赦は無く、「疲れているから。」と断っても無理にしてくる事も多かった。
そんな生活が続くと、竜介への愛情など薄れていくのは当然で、わたしの態度が冷たくなるに連れて、竜介の性欲は外へと向かうようになっていったのだ。
しかしこんな酷い家庭環境でも、竜介は外面だけは良い為、社内での印象は"愛妻家"だった。
竜介は、職場の人たちに「菫は仕事が大変で疲れているから、家事は俺が率先してやるようにしている。」と話しているらしく、わたしはパートさんたちに「野花課長が家事してくれてるんでしょ?菫さんは幸せ者ね!」と身に覚えの無い事ばかりを言われ、その度にいちいち否定するのも面倒な為、笑って適当に誤魔化していた。
この3年の結婚生活の中で、何度"離婚"の言葉が頭の中に浮かんできたか分からない。
けれど、竜介は世間体と自分の"愛妻家"としての印象を気にしている為、離婚には否定的だった。
(お互いに愛してもいないのに、一緒に居る意味って、何だろう······)
それに今の家計状況だと、離婚を考えたとしてもわたしに貯金は難しく、実行に移す事が出来なかった。
(竜介は、きっと余っているお金を沙瑛さんの為に使ったり、自由に遊ぶお金にあてているんだろうな。)
そう考えると、苛立ちよりも虚しさが押し寄せてきて、何の為に毎日必死に働いているのか分からなくなってきてしまうのだった。



