その後、キャラクターくじの売価変更を終わらせ、日向主任に手伝ってもらいながら、キャラクターくじを3タイトル売場に出したわたしは、定時の19時で仕事を終える事が出来た。
そして偶然にも日向主任も19時までだったらしく、同じタイミングで退勤する事が出来た為、わたしはそのまま日向主任と食事へ行く事になった。
「野花さん、大丈夫?」
「何がですか?」
居酒屋へ向かう途中の日向主任の車の中。
日向主任は、黒いランクルに乗っていた。
「いや、俺とご飯とか行ったら、野花課長に何か言われたりしない?」
そういう心配をしてくれる日向主任の言葉に、やはり"愛妻家"のふりをする竜介の本性を見抜いているのだとわたしは思った。
「大丈夫ですよ。多分あの人、今日は帰って来ないと思うので。」
「えっ、そうなの?」
「明日休みなんですよ。次の日が休みだと、仕事終わりに沙瑛さんとそのまま出掛けて、朝帰りがいつものパターンになってるんです。」
わたしがそう言うと、当たり前のように話すわたしの様子を見て、日向主任は「野花さんは、そうなってしまうまで傷付いてきたんだね。」と、まるで独り言を言うように言った。
そうなってしまうまで傷付いてきた···―――――
日向主任の言葉に、確かにそうなのかもしれないと感じてしまう自分がいた。
わたしだって、最初から傷付いてこなかったわけではない。
竜介に裏切られて、苦しかった時期だってあった。
しかし、そんな時期も感情も、あった事すら忘れてしまう程にわたしの心は擦り減ってしまっているのだ。
それから、あまり職場の人たちに会わないように場所を考え、少し足を伸ばした先にある居酒屋へやって来た日向主任とわたし。
個室があり、こじんまりとしていて、何だか落ち着く空間だ。
「野花さん、お酒は?」
「普段あまり飲まないんですよね。」
「そうなんだ。野花課長に腹立って、やけ酒とかしてんのかと思ったよ。」
そう言って笑う日向主任に「わたしって、そんなイメージなんですか?」とわたしは目を細めて言った。
「いやいや!冗談だよ!俺も車だし、烏龍茶で乾杯でもしますか!」
そういう日向主任は、2人分の烏龍茶と、わたしの意見を聞きながら率先して店員さんに注文をしてくれた。



