陰日向に咲く儚花


「とりあえず、承り終わったから、これ事務室に届けに行って来るね。」
「はい、ありがとうございます。」
「戻って来たら、また手伝うから!」

そう言うと、日向主任は承った発注書の控えとリサイクル券を持って、5階の事務室へ向かって行った。
大型家電を承った場合、発注書の控えとリサイクル券は総務課で保管する事になっている為だ。

そして、日向主任の姿が見えなくなると、作業をするわたしに近付く人影が見え、わたしはふと顔を横に向けた。

その人影の主は、ホームファッションの森田さんだった。

「随分、うちの日向主任の事、こき使ってくれてるのねぇ〜。」

嫌味にそう言う森田さんは、作業途中の売場を見て「こんなの毎年一人でやってるくせに。日向主任がイケメンだからって、お近付きになりたいのかしら?」と言いながら、既に陳列してある商品をわざと乱すような事をしてきた。

「既婚者のくせに、図々しいわね。」
「わたしは、そんなつもりありません。」
「じゃあ、何で手伝ってもらってるの?お願いするなら、ハード主任の木浦さんでしょ?日向主任は、ホームファッションの主任なのよ?」

森田さんの言葉を聞き、(やっぱりそう言われると思った。)と思いながら、わたしは「そうですね、申し訳ありません。」と森田さんに仕方なく謝った。

「こっちに迷惑かけるような事しないでよね。」

そう言う森田さんは、わたしを鋭い目付きで睨み付け、バックルームへ入って行った。

「はぁ······、こうなるのが面倒だから、遠慮したんだけどなぁ。」

そんな事を呟きながら、わたしは森田さんに乱された商品を直していく。

その後、戻って来ると言っていた日向主任は結局姿を見せず、森田さんに捕まったのであろう事は予想出来た。

しかし、わたしはそんな事も気にしていられず、作業を進めていく。

最終的に全て終わったのは、定時を過ぎた20時半頃。
残業にはなってしまったが無事に売場作りを終える事が出来、わたしはホッとしながら急いで退勤する準備をしたのだった。