陰日向に咲く儚花


そして売場に戻り、次は学用品の売場を全部入れ替える作業を始める。

すると、作業を始めて早々に「野花さん、洗濯機の客注来たんだけど、対応お願いしてもいい?」と平川さんがわたしを呼びに来た。

わたしは(こんな忙しい時に······)と思いながらも「分かりました。」と言って作業を中断し、レジカウンターへと向かった。

「お待たせ致しました。洗濯機のご購入ですね。」

レジカウンターで待っていたのは、結構なご高齢のご夫婦だった。

「どちらの洗濯機をご希望ですか?」

広告チラシを広げ、わたしはお客様にそう訊くと、奥様は「どれだっけねぇ。」と言いながら広告チラシに目を凝らした。

「んだ、これだべや。」
「こんなんだったかね?」
「これだ、お前がこれがいいって言ってたんだぞ。」

まず、どの洗濯機だったかで揉め始めるお客様。

(これは、時間がかかりそうだなぁ······)

そう思いながら不安に感じていると、「どうしたの?大型家電の承り?」と言う声が聞こえ、わたしの後ろを振り返った。
わたしの後ろには、わたしが対応しようとしていたお客様を覗く日向主任の姿があった。

「はい、そうなんです。」
「俺が代わりに受けるよ。野花さんは、売場の仕事優先して。」
「えっ、いいんですか?」
「普段、家具の承りはやってるから大丈夫だよ。俺が代わるから。」

そう言って、日向主任は「お客様、わたくし日向が代わりに承りさせていただきますね。どちらの洗濯機をご希望ですか?お二人住まいでしたら、こちらの洗濯機が」とお客様の対応を代わってくれた。

わたしは、「ありがとうございます。」と小声でお礼を言い、足早に売場へと戻ると、急いで作業を再開させた。

それから一時間が経っただろうか。
わたしが作業するところへ、日向主任が「洗濯機の客注終わったよー。」と報告に来てくれた。

「ありがとうございます。本当に助かりました。」
「いやぁ〜、なかなか話が進まなくて時間かかっちゃったけど、無事終わったよ。久しぶりにリサイクル券使ったけど、やっぱりリサイクル券の取り扱いは緊張するね!」
「そうですね、わたしも未だに緊張しますもん。」
「あれ間違えると厄介だからね〜。」

そう言って、ホッとしたような表情を浮かべる日向主任は、わたしが作業していた売場を見ると、「こっちもなかなか大変そうだね。」と苦笑していた。