陰日向に咲く儚花


その後も気の済むまでわたしに暴言を吐き続けた義母は竜介に送られ、やっと帰って行った。

義母を見送り戻って来た竜介は、わざとらしく大きな溜め息を吐くと「あーあ、またあんなに母さんを怒らせて。血圧上がり過ぎて倒れたら、お前のせいだからな。」と冷たく放ち、全ての体重を預けるようにドスンとソファーに身を投げた。

「また病院変えて検査受けて来いってさ。」
「もう何件行ったと思ってるの?どこで受けても結果は同じ。」
「ヤブな病院ばっかりなんだよ!もっとしっかり検査してくれる病院へ行け!お前も、もう32だし、そろそろガキ一人は産んでもらわないと、"野花家"を継ぐやつが居なくなるだろうが!」

竜介は偉そうにそう言うが、"野花家"を継ぐといっても、名家でも資産家なわけでもないのに、一体何を継ぐというのだろうか?

「それからな、お前は女を捨て過ぎてる!もっと俺を興奮させられるようになれ!そんなんだから······」

竜介はそれ以上は続けなかったが、わたしはその言葉の続きを知っている。

(そんなんだから、俺は外で発散してるんだ、って?)

竜介が他の女を抱くようになった事を初めて知ったのは、結婚してから一年経った頃。
最初は遊び感覚だったのか、風俗に通ったり、夜のお店の女を取っ替え引っ替え抱いているようだった。

しかし、遊びが"本気"に変わり始めたのは、丁度一年前。
他店から26歳の女性社員、柴原沙瑛(しばはら さえ)さんが異動して来てからだ。

今は柴原さんと不倫関係にあるようで、帰りが遅くなる日もあれば、次の日が遅番や休みであれば朝帰りする時もある。

それでも、わたしは何も感じなかった。

嫉妬心も無ければ、怒りすら感じない。

ただ、わたしは一体何者なのか···――――
それが分からなくなるだけだ。