陰日向に咲く儚花


次の日、わたしは11時に出勤をすると、すぐに売場作りの準備を始めた。

橋口さんが「わたしもお手伝いしましょうか?」と声を掛けてくれたが、橋口さんは橋口さんで調理家電の方の業務があった為、「日向主任がお手伝いしてくれる事になってるので大丈夫ですよ。」と言った。

「えっ、日向主任?って···、新しいホームファッションの主任ですよね?」
「はい。」
「大丈夫なんですか?もし手伝ってるの見られたら······」

橋口さんは、そこまででその先の言葉を言う事を控えたが、わたしは橋口さんの言いたい事が理解できた。

「そう思って、わたしも最初は遠慮したんですけど、日向主任は"大丈夫"だと思ってるみたいで。」
「日向主任、まだ昨日来たばかりですもんね···、野花さんに被害が及ばないといいんですけど······」
「大丈夫ですよ。わたしは、慣れてますから。」

わたしはそう言って、心配してくれる橋口さんに微笑みかけた。

橋口さんは「何かあったら、言ってくださいね。わたしに出来る事なんて、本当に限られちゃってますけど。」と苦笑いを浮かべ、自分の仕事へと戻って行った。

(さて、すぐ始めなきゃ今日中に終わらない。)

わたしは早速、作業に取り掛かった。

まずは学習ノートの売場作りだ。
自社ブランドの"Re:Style"で出している5ミリ方眼ノートが毎年よく売れる為、"Re:Style"の5ミリ方眼ノートをメインに陳列していく。

それから学習ノートで有名どころのメーカーのノート、5冊入りのまとめ売りも下の段に陳列していった。

学習ノートが並ぶ棚の上の方には、近隣にある小学校から情報を集めた"使用ノート一覧"を学校名ごとに掲示し、ノートを購入目的で来店する保護者様たちがノートを間違えて購入してしまわないような配慮もするように心掛けていた。

すると12時なり、日向主任が出勤して来た。

「おはようございます。」

真っ先にわたしが作業する学習ノート売場の様子を見に来てくれた日向主任は、進行状況を見ると「もうここまでやったの?!」と驚いていた。

「おはようございます。でも、これでもまだ3分の1も終わってないですけどね。」
「だって、作業始めてまだ一時間でしょ?野花さん、さすがだなぁ······」
「学習ノートが終わったら、学用品の棚も5台分、全部入れ替えなので早くしないと間に合わないんですよ。」

わたしがそう言うと、日向主任は「えっ?!そうなの?!」と目を見開き、それから「ホームファッションの人たちに挨拶して来るから、指示とかが終わったらすぐ手伝うね!」と言い、ホームファッションの売場の方へ小走りで向かって行った。