「買い物して来なかったから、冷蔵庫にあるもので作ったの。」
「材料がないなら買って帰って来るとかあるだろ。こんな、ただ肉と野菜を炒めただけの料理と呼べないようなもん出して、恥ずかしくないのか?」
わたしは竜介の言葉を右から左へ聞き流すと、食卓につき、一人で「いただきます。」と手を合わせた。
そんなわたしに「おい、聞いてんのか?!」と、強い口調をぶつけてくる竜介。
わたしは静かに味噌汁をすすると、「何?」と竜介の顔も見ずに返事をした。
「こんな残飯出して、恥ずかしくないのか?って訊いてんだよ!俺はちゃんと金を渡してるだろ?それなのに!」
竜介がそこまで言ったところで、わたしは「ふふっ。」と静かに笑った。
すると、わたしの笑いに過剰に反応する竜介は「何笑ってやがる!」と怒りを露わにした。
「"金を渡してる"?もしかして、あの3万の事?」
「そうだよ。二人なら、3万で充分だろ!」
「へぇ···、3万で足りてると思ってるんだ。」
「はあ?!」
「3万で充分って思ってるなら、この献立が妥当だと思うけど。それか、肉野菜炒め無しの冷奴だけでも良かったって事?」
わたしが淡々とそう言うと、竜介は今にもブチギレそうな程に顔を真っ赤にして、わたしが作った肉野菜炒めが盛り付けられた皿を持ち、キッチンへと向かって行った。
そして生ゴミ用のゴミ箱を開けると、わざとわたしに見えるように高い位置から、肉野菜炒めをゴミ箱の中へ落としたのだ。
「俺を馬鹿にするのもいい加減にしろよ?」
竜介は吐き捨てるようにそう言うと、持っていた皿をシンクの中へと投げ付け、それから何も言わずに家から出て行ってしまった。
また一人残されたわたしは、溜め息を吐いて箸を置いた。
(食欲失せちゃった。)
わたしは椅子から立ち上がると、キッチンを覗きに向かった。
そこには、ゴミ箱の中へ乱雑に捨てられた肉野菜炒めと、シンクの中で二つに割れた皿が寂しそうに横たわっていた。
その光景に虚しい感情がじわりとわたしの心を削ぎ落とす。
しかし、涙は出てこない。
わたしはいつから涙も出なくなってしまったんだろう。
人間って、限界を越えてしまうと、涙すら出てこなくなってしまうんだなぁ···――――



