陰日向に咲く儚花


それからわたしの定時の19時が近づくと、わたしは引き継ぎノートに橋口さんへの"出勤したらまずやって欲しい事"を記入した。

それは、新作ゲームのダミーケースを売場に陳列する事だ。
これは開店時間から出勤の橋口さんにしかお願い出来ない事だった。

引き継ぎノートを書き終え、(さて、帰ろう。)としたタイミングでなぜか混み出すレジ。

わたしは定時が過ぎてもレジ対応をし、レジが落ち着いてからやっと退勤する事が出来たのだった。

(はぁ······、疲れたぁ。)

ドッと疲れが身体にのしかかる帰り道。
帰宅したら、まず何より先に体を休める休めたい。

しかし、帰宅すれば家事がわたしを待っている。

(買い物して帰るの面倒くさいな。今日はある物で簡単にご飯作ろう。)

わたしはそんな事を考えながら、バスに揺られ帰宅した。

帰宅をし玄関を見ると、そこには脱ぎっぱなしにされている竜介のスニーカーが散らばっていた。

(何だ、今日は早いんだぁ。)

竜介のスニーカーを揃え、浮腫んだ足をパンプスから解放させたわたしは、重たい身体を引きずりリビングへと向かう。

するとそこには、ソファーに寝転がりながらスマホをいじる竜介の姿があった。

当然だが、わたしより帰宅が早いからと言って、家の事は何もしてくれていない。

「やっと帰って来たか。」

帰宅するわたしに向かって言う、竜介の第一声はそれだった。

「早く飯作れよ。俺、ずっと待ってたんだけど。」
「待ってないで作ってくれてても良かったんだけど?」

わたしが呆れながらそう言い返すと、竜介は「はっ?何で俺が作らなきゃいけねーんだよ。」と文句ばかりをたれていた。

(今日わたしが帰って来る時、沙瑛さんはまだ売場に居たから、きっと遅番なんだろうな。だから竜介は、すんなり帰宅して来たという事か。)

そんな事を考えながら、わたしは小さな溜め息を吐き、コートを脱いだ後で一瞬も座る事なくキッチンへと立った。

それから冷蔵庫にあった材料で用意したのは、肉野菜炒めと冷奴、玉ねぎと玉子の味噌汁に白米だ。

しかし、その料理たちを食卓に並べると、それを見た竜介は「何だよこれ。これで作ったつもりか?」とまるで残飯でも見るような表情で料理からわたしへと視線を上げた。