わたしは休憩後、5件の作業指示書を済ませてから、明日に向けてのある準備をしていた。
それは···―――――
「え、この什器どうしたの?」
バックルームに明日使う為の什器を並べていると、5階の事務室から下りて来た日向主任に声をかけられた。
「あ、すいません。邪魔ですよね。」
「あ、いやいや!そういう意味じゃなくて!こんなに、4台もどうするんだろうと思って。」
「実は明日、"新学期"の為の学習ノートが大量に入って来るんですよ。」
わたしがそう言うと、日向主任は「あぁ、そんな時期だもんね!」と納得していた。
毎年、春先になると新学期の準備の為にたくさんの学習ノートたちが納品されてくる。
それと合わせて、新入学の文具などの納品もある為、学用品売場がガラリと変わる他、"新入学、新学期"の為の学習ノート専用スペースを作らなければならないのだ。
この什器は、その為だった。
「こりゃ大変そうだなぁ······」
「はい。明日はノートと学用品の納品でバックルームが騒がしくなると思います。」
わたしがそう言うと、日向主任は「それは仕方ない事だよ。」と言った上で、「あの、まさかだけど、一つ確認してもいいかな?」と尋ねてきた。
「はい、何でしょう。」
「その"新学期"の準備って、野花さん一人でやるわけじゃないよね?」
日向主任の質問にわたしはキョトンとすると、「わたし、一人ですよ?」と即答した。
「えっ?!嘘でしょ?!」
「毎年、わたし一人でやってますよ?」
「え、いや、木浦くんは?!木浦くん、ハード主任だよね?!一緒に作業したりしないの?!」
「木浦さんは、基本的に"サイクル"のことしかやりません。なので、この3階にはほとんど来る事はありませんよ?」
わたしの言葉に驚き、言葉を失う日向主任。
わたしは、そんなに驚かせてしまうような事を言っている自覚がなかった。
「いや、確かに、木浦くんと話した時に"3階は野花さんに任せておけば安心なので"とか言ってたけど···、まさかそこまで酷いだなんて······」
そう言いながら、胸の前で腕を組み、険しい表情を浮かべる日向主任。
日向主任は、本当に変わった人だ。



