すると、わたしが持ち歩いている社用スマホが鳴り出した。
私服の上から制服として着用しているエプロンのポケットから社用スマホを取り出し、画面を見てみると、"CSC"からの着信だった。
"CSC"とは、カスタマーサポートセンターの略である。
「はい、ハード野花です。」
『CSCの鈴木です。お客様より、"ぷくぷくドロップシール"についてのお問い合わせですが、お繋ぎしてもよろしいでしょうか?』
(あー、またシールのお問い合わせかぁ。)
この"ぷくぷくドロップシール"についてのお問い合わせは、ここ最近で一番件数が多いお問い合わせだ。
大型店では取り扱っているのだが、残念ながらうちのA店は小型店の為、"ぷくぷくドロップシール"の取り扱いはしておらず、毎回お客様には取り扱いがない事を伝えた上で謝罪してばかりだった。
今回もお客様には取り扱いがない事を伝え、電話を終えると、それを傍で聞いていた日向主任が「"ぷくぷくシール"?何それ?」と尋ねてきた。
「最近、小学生の間で流行っているシールみたいです。人気があり過ぎて、どこもすぐ完売してしまうみたいで、うちの店にもよく問い合わせがくるんですよ。」
「へぇー、そんなに人気があるシールがあるんだ。」
「H店とかN店みたいな大型店は取り扱ってるんですけど、うちの店は小さいので取り扱いがなくて。」
「なるほどねぇ。今度問い合わせがあった時の為に覚えておくよ。」
日向主任はそう言うと、ホームファッションのデスクに座り、自分の仕事を始めていた。
(覚えておくよって···、問い合わせがあったら、対応してくれるって事?)
日向主任と話していると、わたしにとっては新鮮な事ばかりで何だか不思議な気持ちにさせられた。
そしてわたしは休憩時間を終えると、印刷した作業指示書を持って、売場へ下りて行った。



