陰日向に咲く儚花


その後、売場での業務をしながら、レジやお客様に声を掛けられ接客をし、あちこち駆け回っている時、奥のダイニング売場に日向主任と森田さんの姿が見えた。

どうやら、日向主任は森田さんに捕まってしまったらしい。

喋り出すと長い森田さんは、ニコニコしながら日向主任に話し掛けていた。

(案の定だなぁ。)

そんな事を思いながらも、森田さんを気にしている暇も無く、わたしはレジに接客に業務に追われ続けた。

そして、やっと休憩時間が取れたのは16時頃。

事務室がある5階の休憩室に上がり、窓際の1人席に座って、一息つく。

お腹は空いているはずなのに食欲がなく、わたしは昼食をいつも野菜ジュースだけで済ませてしまう癖がついていた。

休憩時間は45分間。
しかし、45分も休憩を取っていられる程の余裕はなく、わたしはいつも野菜ジュースを飲み終えると、まだ休憩時間中だとしても事務室へ向かい、事務室でしか出来ない仕事をするようにしていた。

売場に下りれば、忙しくて事務室に来る事は出来ない。
事務室にあるパソコンでしか出来ない仕事をするには、この休憩時間を利用するしかないのだ。

わたしは本社からの作業指示を確認すると、その指示書をまとめて印刷した。

それから、今後の商品販売のスケジュールや売り出す商品についての情報などを把握していく。

すると、丁度事務室に入って来た日向主任に「あれ?野花さん。」と声を掛けられた。

「あ、日向主任。お疲れ様です。」
「野花さんって今休憩中じゃなかったっけ?」
「まぁ、そうなんですけど···、この時間にしか事務室に来れないので、今しか出来ない仕事をしてるんですよ。」

わたしがそう言うと、日向主任は「えっ?!」と目を丸くして驚いていた。

「もしかして、それっていつもなの?」
「はい、そうですね。」
「売場でもあんなに仕事してるのに、休憩中までこんなに仕事してたら、身体もたないよ?」

わたしを心配してくれる日向主任の発言に、わたしまで驚いてしまう。

これがわたしには当たり前の毎日になっていて麻痺していたけれど、確かに休憩中に仕事をしているのはおかしな話だ。

それにわたしの身体を心配して、こうして声を掛けてくれたのは、日向主任が初めてだった。