池杉学園GOODグループ

「えー! あたしもこの子仲間にするの嫌かもぉ!」
「えぇ!?」

 真っ直ぐに俺を指差し、断言する光先輩。

「うわーんっ、もうやだぁ、影ぇ!!」

 しかも、隣にいた影先輩に抱きついて泣き出してしまった。
 まさか、入学初日に女の子を泣かせてしまうだなんて、思いもしなかった。一生の不覚かもしれない。泣きたいのは俺の方だ。もうやだ。

「光はね、最近男よりカッコいいから無理って理由でフラれてしまって、トラウマになっているんだ。あんまり、その、言わないでやってくれ」

 生徒会長がすかさずフォローしてくれるけど、顔が笑っていない。と言うか、あきらかに面倒くさいって顔してる! 女の子の恋事情って全然わからねぇから、面倒くさそうな気持ちは分からなくもないけれど。
 そう思っていたら、善先輩がやれやれと首を振りながら立ち上がった。そして、俺の肩を軽く叩くと、こちらも面倒くさそうに別の椅子に座って置いてあった資料を眺め出した。

「とりあえず、戻ってきたならまとめてもらっていいっすか? センセー」

 ダルそうに片肘を机について頬杖をする善先輩が、扉に視線を送った。
 すると、ギッと申し訳ないように小さく扉が開いて、隙間からスーツ姿の先生が入ってきた。入学式は、あのまま無事終わったのだろうか。

「話は済んだのかな?」
「ええ、もうみんな紹介済みです」
「なら良かった。と、言うことで、みんなには明日からも引き続き生徒会役員「GOODグループ」として活躍してもらうので、どうぞよろしく。私は生徒会の見守り役、森谷です」

 初めて見る教師の登場にホッとする。が、周りを見れば、みんなヤル気のない眼差し。
 大丈夫か、この生徒会!?

「俺は断固拒否! 認めへんからな! よそもんがこの部屋の敷居またいでんのにもむしずがはしんねん」

 全身を掻くような仕草をして、七条由がまた俺に対して暴言を吐く。

「七条くん。君は工藤くんに感謝しなければならないんですよ」
「は? なんでや」
「小学校まではそのルックスと嘘で作られた心イケメンでなんとか甘く見てきましたが、これからはそうもいかない。よりこの学園のトップにふさわしいイケメンになるために、工藤くんの才能を借りながら切磋琢磨して、中学校生活を送っていってもらいます。私は君がこの学園トップの人気者になり続ける日を楽しみに学校へ来ているんですから。くれぐれも、がっかりさせないでくださいね」

 え? なにそれ。どゆこと?
 先生、生徒の人気度を楽しみに学校来てんの?
 先生の言葉の意味がちょっと分からない。
 たしかに、学園案内のパンフレットにも生徒会役員は本校トップクラスの生徒で構成されており、文武両道、容姿端麗を売りにしているようだった。
 現に、俺の地元でも家からは遠くなるけど行ってみたいと話す女子はけっこういた。イケメンなんて俺には関係ないしと思って、そこはノーマークだったのだけど、なんか俺、今思い切りその枠に入り込んでないか?

「……工藤の才能ってなんやねん」

 あ、そこは俺も気になった。ナイス質問だ、七条由。

「それはお互いに教え合って、知っていってください」

 はっきりきっぱりと言い切ると、森谷先生は七条由を黙らせて生徒会室から出ていった。

「では、明日からよろしくお願いします」

 生徒会長がふんわりと笑って場を和ませる。泣いていた光先輩も、もうすっかりもとのイケメン……いや、うるわしい姿に戻っている。

 いや、ちょっと待てよ?
 俺、言われるがままにここに来ちゃったけど、流されすぎてないか?
 え? 生徒会メンバー? 俺が? GOODグループ? なんだそれ。
 よそもんとかムシズがはしるとかひどいこと言われてるのに誰も突っ込まないし、泣きたいの俺じゃね?
 勝手に話を進めるな!