池杉学園GOODグループ

 森谷先生の作ってくれたケーキは、ケーキ屋さんでも見たことのないくらい素晴らしい出来だった。二段重ねのホールケーキにはチョコレートで作られたピンクのバラが並び、GOODグループへようこそと書かれたピック。周りには、この前クリアバッグに入っているのを見た、メンバーのぬいぐるみたち。そして、ケーキの正面には、由と俺、二人のぬいぐるみが並んで座っている。
 俺まで器用に作られている。思わず、森谷先生の愛を感じてしまった。

「由くん、蒼輝くん、改めまして、池杉学園GOODグループへようこそ!」

 真心先輩が拍手をしながら笑顔を向けてくれると、周りにいた森谷先生、影先輩、光先輩、香坂さんも拍手をくれる。
 あたたかい歓迎ムードに、俺は湧き上がってくる涙を堪えられなくなって、視界をゆらゆらと揺らしながら振り返った。

「これのどこが大爆笑なんだよ! 大号泣ものだろ! やっぱ俺は由の感性が分からなすぎる! 正反対すぎるんだよ! 絶対由とは分かり合える気がしない」

 ボロボロと、ついにこぼれ出してしまった涙を拭いながら、俺は叫ぶ。

「考えることも、やることも、由はいっつも俺とは真逆だ」
「……なんやそれ。俺とは一緒にやっていけへんってことか? 今ここに来て立っといて、生徒会辞めるとかなしやで?」

 由がギロリとまたいつもの鋭い目を向けてくる。それだってもう慣れた。俺にそうやって言ってくれるのは、由なりの優しさだって、俺は勝手に解釈するようにしたからだ。実際は本当に怒っているだけとは分かっていても。

「まぁ、話は最後まで聞けよ」

 俺はふっと、笑って見せた。いつも由のペースでいけると思うな。俺だって色々考えてるんだ。これまでの由を見てきて、分かったことがある。

「だからこそだよ。俺は由のことを全力でサポートする。由に出来ないことは俺が教えるし、俺が出来ないことは由に教わる。それでお互い平等かつ、高め合っていける。俺のこれからのGOODグループでの役割は、由のサポートをしながら、トップを目指すことだ」

 言い切ってやった。俺はそれでいいと思っている。なんの目標もなく日々を過ごすよりも、なにか目標があった方が日々は充実する。その目標が高ければ高いほどに、やりがいもあるはずだ。嫌なことなんて考えなくてもいいくらいに、俺は俺の出来ることを全力でやっていく。

「工藤くん!! すばらしいっ!!」

 パンッパンッと大きな拍手がして、振り向けば森谷先生がギョッとするほど泣いている。

「先生は感動しました。やはりあなたはレジェンドのお孫さんだ。原石でも芯は強い。これは、七条くん少し危ういかもしれませんね」
「はあ!? なんやねんそれ! 蒼輝が俺より人気者になるいうことか!?」
「人気者は由だよ」

 そこは間違いない。断言できる。

「だよなぁ」

 ふふんとドヤ顔をする由に、俺もふっと笑う。

「けど、今のままだと決定的に欠けている部分があるから、そこを直していかないと俺はいつでも人気度を奪いにいくからな。明日から徹底的に俺は由を完璧な池杉学園GOODグループトップにするために厳しくやっていくと決めた!」
「……な、なんや、それ。つーか、蒼輝いきなり強気になってへんか?」

 初めて見る由の怯えている顔。
 俺でも由をそんなふうに追い詰められるのかと、少し浮かれてしまう。

「当たり前だ。俺は本気でやるからな! じいちゃんの名にかけて!」

 ビシッと由を指差し、決め台詞を放つ。
 胸のモヤモヤがいっせいにすっきりと晴れていった。とても清々しい気持ちだ。

「よーし、じゃあバシッと決まったところで、ケーキ食べよっかぁ」

 ふんわりと優しい真心先輩の声で、緊迫していた場が和んでゆく。