池杉学園GOODグループ


 ああ、デジャヴだろうか。
 見覚えのある天井が見えた。心地いい風が部屋の中を通り過ぎていく。目が覚めると、俺は保健室のベッドの上だった。

「あ、気がついた?」

 聞き慣れない女子の声。そして、俺を覗き込んできたのは知らない顔。長いまつ毛はおうぎ状にバッチリ上がり、大きな瞳の割に顔が小さい。
 え、誰?
 そうは思ったけれど、頭の片隅で思い出した。もしかしてこの人……

「来來ー! もう俺と変われ! 蒼輝がもし目覚まして来來に一目惚れでもしたら絶対にゆるさねぇからな!」

 バターンッと思い切りドアが開いたかと思えば、善先輩が勢いよく入ってくる。そんなに取り乱した善先輩なんてレアじゃないだろうか。と言うか、やっぱりこの人。

「来來は自分がキレイでかわいくて絶世の美少女だってこと、本当自覚して?」
「やだ善くーん、そんなことナイナイ」

 あっははーっと、善先輩のあせりなんか一掃しているのは、やっぱり善先輩の彼女の来來先輩だろう。会話を聞いていると、かなり能天気な人だ。キレイだしかわいいは確かに認めるが、なんだかノリがうちのばあちゃんみたいだ。なんて思ってしまった。

「うわー! 蒼輝!! 遅かったか!! 見たよな? 見ただろ? 見てしまったんだよなぁ!?」

 ずかずかと近づいてきて、善先輩が涙目になりながら俺の顔を覗き込んで睨む。
 見たとは、来來先輩のことをだろうか?
 それについてはイエスだか、なんだかうかつにうなずけない気がする。

「善くん、歓迎会は?」
「ああ、盛り上がってるけど、なんやかんや蒼輝待ちだ」
「え!? 俺待ち!?」

 善先輩の言葉に、一気に状況を思い返す。
 なに気を失ってるんだ俺は。またみんなに迷惑かけているし、しかもほぼ全校生徒の前で気絶するなんて。
 明日から教室でも絶対に仲間はずれ確定だろ。やらかしてしまった自分にガッカリする。
 だけど、そんな俺のことなんかかまわずに、善先輩は来來先輩にくどくどと何かを言い始めている。そんな二人をじっと見ていると、善先輩のしつこい文句に痺れを切らしたのか、来來先輩がダンッと右足を一歩踏み込んだ。

「あたしは善くんが一押しで大好きですっ!」

 目を見開く善先輩。そして、顔を耳まで真っ赤にしたかと思うと、両手を伸ばしてぎゅっと来來先輩のことを抱きしめた。

「ごめんねぇ、蒼輝くん。善くんってかなりのやきもちやきなの。ちゃんと伝えないと安心してくれないんだよね」

 あはっと、困ったように笑う来來先輩は、善先輩の頭をよしよしとなでている。きっと、善先輩はもう俺のことなんて頭にないんだろうな。これ、見てもよかったのかな。と、やけに冷静になってしまう俺だけど、仕方ないよな。

「まだ歓迎会って、やってるんですよね? 俺行ってきます」

 よく分からないけど、善先輩は来來先輩とお幸せに! 心の中で叫びつつ、逃げるように俺は保健室を飛び出した。