池杉学園GOODグループ

 みんなと調理室に向かう俺は、ふと思い出す。そういえば、もう一人連れて行かなきゃいけない人が居たはずだけど。

「もしかして、来來先輩のこと考えてた?」
「え! あ、は、はい」

 影先輩がすぐに俺の表情をキャッチして、図星をついてくる。

「もうこのまま公開歓迎会になりそうだし、今回は残念だけど参加出来なそうだな。善先輩、来來先輩のことだけは公に出したくないみたいだから」
「え、さっき由も小声で話してたけど、二人って極秘で付き合ってるんですか?」

 誰にも知られてはいけない感が、あの由からも少し漂っていた。

「極秘ってわけでもないけど、善先輩がかなりのやきもち焼きでさ」
「……やきもち?」
「まぁ、来來先輩に会えば分かるよ。めちゃくちゃかわいい人だから」
「……はぁ」

 さっき、由もそう言っていた。かわいい人。かわいい……って、どんな感じだろうか。
 俺は弟や妹の姿を思い描く。ちょこまかと楽しそうに、笑顔でかけ回っては転んで泣く。小さな体と手足で一生懸命に動いているのは、見ていて飽きないし、かわいいと思う。ただ、あまりに泣き止まなかったり、むやみに物を投げたり口にしたりする姿は完全に怪獣だ。たぶん、ああいうかわいいではないと思う。うん。
 かわいいがわからないままに自己完結をして、俺は隣に並ぶ香坂さんを見た。

「あたしから見た来來先輩は、めっちゃキレイな人だよ」

 何も聞いていないんだけど。とは言えずに、でも、たぶん俺が考える顔をしていたから、反応してくれたのかもしれない。
 かわいいとキレイの感覚が、俺にはいまいち分からない。今日は会えないらしいし、また次会える時のために、これは自分の中の宿題にしておこう。

 調理室付近まで近づくと、何やらザワザワと声が聞こえてくる。さっきまでほとんど人のいない教室と廊下を歩いてきていたのだけど、ここへ来て、急に人の気配をめちゃくちゃ感じる。
 一階にある調理室のベランダに立つ真心先輩と善先輩の後ろ姿が見えて、二人の前には詰め寄るたくさんの生徒たち。まるで、イベント会場のように生徒で溢れていた。

「みんな見に来てくれてありがとう! ここからは生徒会に新しくメンバーに加わる一年生との歓迎会をしようと思うので、パフォーマンスは終わりです。配信を続けるかどうかは皆さんもお馴染み、七条由と工藤蒼輝の同意がないといけないので、一旦解散で──」

 真心先輩が場を締めようとしている所へ、由が一気に走り出す。