池杉学園GOODグループ

「やぁ、みなさん。そして新入生さんははじめまして。僕は生徒会長の三年、仲谷真心(なかたにましん)です。集まってくれてありがとう」

 さっきいた声の高い先輩は、やはり生徒会長だった。頼りなさげな困った表情のかわいらしいイケメン。近くで見るとモデルさんみたいにスラリとした手足に華奢なスタイルで、愛され王子様タイプだ。
 みんなよりも一歩後ろで様子を伺う俺は、様子を見ていることしか出来ない。
 すると、生徒会長が一人ずつ名前を呼んで紹介を始める。

「じゃあ、まずはこちら、副会長で三年の曽根(そね)(ぜん)

 すぐ横にいるのは、見るからにやる気がなさそうにソファーに深く座り込んで、目をつむっている男子生徒。はっきり言って真面目には見えない。

「うっす」

 片手を上げて小さく呼吸のように吐き出したあいさつ。あいさつ?

「続いて、二年の多田(ただ)(かげ)と多田(ひかる)

 並んで立っている二人に視線を送ると、同じ顔をしているけれど、一人は暗い影を背中に背負っているような湿っぽい雰囲気で、長めの前髪でよく顔が見えないけれど、一瞬だけふわりと風が吹いた瞬間に見えた顔が、とんでもなくかっこいい。もう一人は短めのショートヘアで生き生きと瞳を輝かせて姿勢よく立つ、どこからどう見ても目鼻立ちの整ったイケメン二人だ。
 しかし、名は体を表すとは言うけれど、これほど当てはまる人はいないかもしれない。どっちが影先輩でどっちが光先輩なのかは、聞かなくても一目瞭然だ。

「二人は双子なんだ。良いやつらだよ」

 生徒会長はにっこり微笑んで、次に視線を移す。うん、紹介が雑すぎます。

「で、最後に今年入学した新入生を新しく生徒会メンバーとして歓迎したいと思います」

 生徒会長の視線が、俺ともう一人を見ている気がする。

 この中でまだ紹介されていないのは、俺とあと一人。さっき後ろからもの凄い圧をかけてきたやつだ。確か名前は……

「一年、七条(しちじょう)(よし)くん。そして同じく一年、工藤蒼輝くん」
「なんで、よそもんが生徒会に入りよる。異物混入やろがい」

 またしてもドスの効いた低い声が室内に響く。姿が見えないと思っていたら、重厚な机の前に背もたれを向けていた椅子が、クルリと回った。すると、七条由がしかめっ面をしながらこちらを向いている。たぶんというより、絶対にそこは生徒会長が座るべき椅子だと思うが、誰も突っ込まないので俺も何も言わない。
 それよりも、今の言葉にツッコミどころが満載だ。
 よそ者。異物混入。
 俺のことを言っているのか? ひどくね?

「別によそ者じゃないよ。今日から我ら池杉学園の一員だし」

 そーだ、そーだ!
 生徒会長の言葉に心の中で賛同する。

「はぁ!? こちとら初等部からずぅーと池杉学園でやってきてんねん! それを、途中から入り込んできよったやつを生徒会の仲間に入れるとか、頭沸いてるんか」

 たぶん。と言うか、かなり、彼は俺がここにいることが気に食わないらしい。ひしひしと圧が伝わってくる。

「なによ、同じ一年なんだから仲良くしなよ」

 はぁーっとため息を吐き出したかと思えば、光先輩が怒りだす。腰に手を当てて、やれやれと呆れるような仕草に、違和感を抱く。
 あれ? この先輩、男子じゃないのか……?
 さっきまで、ここにいる全員が男だと疑わなかったのに、光先輩の声と喋り方になにかがひっかかる。男子にしては低すぎないハスキーボイス。ショートカットで程よい前髪から見える瞳は切れ長で大人っぽい。喋り方と仕草は完全に女子だけど、顔は男の俺から見てもかなりのイケメン……あれ? よく見たらスカート、履いてる?
 視線の先には、長い足がスラリとスカートから伸びていた。

「なにか言いたげだね、蒼輝くん」
「え、あ、その」
「やめろ、無茶振りすんな真心」

 善先輩が焦るようにこちらを振り返る。
 ここは素直に伝えた方がいいのかと不安になる。なんと答えるのが正解かなんて、そんなの俺には分からないから、思ったままを口にした。

「光先輩って、男子よりもめちゃくちゃカッコいいですね!」

 もちろん、俺は褒めたつもりで言ったのだが。なぜか生徒会室は静まり返っている。

「あははは……は?」

 恥ずかしくなって笑ってごまかそうとしたけど、笑っているのは俺だけだ。
 え、なんで?
 先輩たちは口を開けまま唖然としている。しかも、さっきまでひょうひょうとしていたはずの七条由まで顔を真っ青にしている。
 は? なに? 俺なんか間違ったこと言った?