調理室までの道のりは、意外と遠いようだ。
由が学校の見取り図をスマホで俺に見せてくる。
「ここが、ゴールの調理室や。で、ここに辿り着くまでに、友里と影先輩と光先輩と来來先輩をランダムに一人ずつ仲間に加えていく」
「……は? なんだよいきなり。ってか、最後の人誰だよ」
香坂さんと双子の先輩たちは分かったけど、最後の先輩は聞いたことのない名前だったぞ。そこは善先輩じゃないのかよ。
「え? 来來先輩?」
「そう、それ、その人」
俺がうなずくと、由はニヤけた顔をしてもったいぶるように、ためらいながら俺に近づく。
「善先輩の彼女」
ようやく、ぼそりと周りに聞こえないように配慮しながら小声で言うけど、そもそもここには俺と由しかいない。
「なんでそんな人が連れ出す中に入ってんだよ」
個人的なことは生徒会と関係ないだろ。
「めっちゃかわいい人やで」
「なんでまだ小声なんだよ」
由の行動パターンがいまだに読めないからイラつく。
「ここから、残りのメンバーを調理室まで引き連れて行きますのでどうぞよろしくー!」
いきなり声を高くしたかと思えば、敬礼のポーズをしてウインクを決めてくる。しかも、喋り方が関西弁ではないことに気がついて、由がGOOD七条由モードに入ったことを悟った。
スッとまっすぐ前方に右手を挙げると、由の手には棒に固定されたスマホがある。画面には、笑顔の由と戸惑う俺の顔が半分だけ映り込んでいた。
はぁ!? なんだよそれ!
「GOOD配信をご覧の生徒の皆さーん。今から生配信スタートです! 僕たちは歓迎会の場所に無事到着することが出来るのか! まだ池杉学園の構造をよく知らない蒼輝くんと一緒に調理室目指して歩いて行きますー」
いきなり始まった生配信。
ノリノリの由の横で、俺は無表情のまま歩き出す。下手に喋ったら絶対に変なこと言いそうだし、これが全校生徒のタブレットを通して配信されているなんて知ったら、それこそ何も言えない。
「由くんー! 学校案内見てたよー! 頑張ってー!」
「ありがとーっ! 無事にゴールするまで見守っていてくださいーっ」
「絶対最後まで応援してるねー!」
歩けばすぐに周りの生徒が由を発見して遠目から声をかけてくる。
これがファンサービスというものなのだろうか?
たぶん先輩だろう女子の集団に、由は右も左も手を振っては笑顔を振りまいている。もちろん俺にはそんなことをするのは無理だ。それなのに。
「蒼輝くーんっ、頑張ってー!」
どこからか、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、思わず振り返ってしまう。
「見守ってるよーっ」
こちらに手を振りながら笑ってくれる女子たちを見て、無言のまま首を前に戻す。
何で俺まで応援されてるんだよ。意味がわからん。
「こらこら、蒼輝くーん。せっかくみんなが応援してくれているんだから、ありがとうの一つも言わないとダメじゃない?」
わざとらしく大きな声で、由が笑いながら俺にスマホを向けてくる。
「は!? いや、」
まぁ、確かに、応援してくれているのに無視は良くない。由のくせに真っ当なこと言いやがる。否定はできない。
俺は歩きながらも後ろを振り向き、「あ、ありがとう、ございます」と、カタコトな感謝を伝えるとすぐに前を向く。
すぐにスマホが顔に近づいてくるから、手で画面を隠した。
こんな恥ずかしいとこ写すんじゃねえ! と叫びたいのを我慢して、たぶん真っ赤になってしまっている自分の顔が写り込まないようにと、必死の抵抗をした。
「じゃあ、まずは影先輩と光先輩の教室に向かいますー!」
そう言って、由は配信をしながら二年生の教室がある二階に向かう。
中庭から昇降口を通って、一番近いのは一階にある一年生の教室なのだが。俺的には、香坂さんを先に連れて行った方が、効率がいい気がするのだけど。
俺が「なんで?」と、口には出さずに疑問な顔をしていると由が笑う。そして、小声で耳打ちしてくる。
「俺の素が出るから、友里は最後でええねん。もうすでについて来とるし」
そう言って俺から離れると、にーっこり笑って「頑張るよ! 蒼輝くんっ」と思いっきり肩を叩かれる。加減の知らない由によろめきながら後ろを見ると、素早く動く影がピタリと止まった。
キャーキャー騒いでいる生徒の死角に、ひっそりと立っているのは、香坂さん!?
ジッと見ている俺に気が付いて、手でオッケーと合図をくれる。
いや、なにが?
「さぁ、首を傾げていないで行こう。蒼輝くん」
由が進み出すから、香坂さんの行動を気にしながらもついてゆくしかない。
由が学校の見取り図をスマホで俺に見せてくる。
「ここが、ゴールの調理室や。で、ここに辿り着くまでに、友里と影先輩と光先輩と来來先輩をランダムに一人ずつ仲間に加えていく」
「……は? なんだよいきなり。ってか、最後の人誰だよ」
香坂さんと双子の先輩たちは分かったけど、最後の先輩は聞いたことのない名前だったぞ。そこは善先輩じゃないのかよ。
「え? 来來先輩?」
「そう、それ、その人」
俺がうなずくと、由はニヤけた顔をしてもったいぶるように、ためらいながら俺に近づく。
「善先輩の彼女」
ようやく、ぼそりと周りに聞こえないように配慮しながら小声で言うけど、そもそもここには俺と由しかいない。
「なんでそんな人が連れ出す中に入ってんだよ」
個人的なことは生徒会と関係ないだろ。
「めっちゃかわいい人やで」
「なんでまだ小声なんだよ」
由の行動パターンがいまだに読めないからイラつく。
「ここから、残りのメンバーを調理室まで引き連れて行きますのでどうぞよろしくー!」
いきなり声を高くしたかと思えば、敬礼のポーズをしてウインクを決めてくる。しかも、喋り方が関西弁ではないことに気がついて、由がGOOD七条由モードに入ったことを悟った。
スッとまっすぐ前方に右手を挙げると、由の手には棒に固定されたスマホがある。画面には、笑顔の由と戸惑う俺の顔が半分だけ映り込んでいた。
はぁ!? なんだよそれ!
「GOOD配信をご覧の生徒の皆さーん。今から生配信スタートです! 僕たちは歓迎会の場所に無事到着することが出来るのか! まだ池杉学園の構造をよく知らない蒼輝くんと一緒に調理室目指して歩いて行きますー」
いきなり始まった生配信。
ノリノリの由の横で、俺は無表情のまま歩き出す。下手に喋ったら絶対に変なこと言いそうだし、これが全校生徒のタブレットを通して配信されているなんて知ったら、それこそ何も言えない。
「由くんー! 学校案内見てたよー! 頑張ってー!」
「ありがとーっ! 無事にゴールするまで見守っていてくださいーっ」
「絶対最後まで応援してるねー!」
歩けばすぐに周りの生徒が由を発見して遠目から声をかけてくる。
これがファンサービスというものなのだろうか?
たぶん先輩だろう女子の集団に、由は右も左も手を振っては笑顔を振りまいている。もちろん俺にはそんなことをするのは無理だ。それなのに。
「蒼輝くーんっ、頑張ってー!」
どこからか、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、思わず振り返ってしまう。
「見守ってるよーっ」
こちらに手を振りながら笑ってくれる女子たちを見て、無言のまま首を前に戻す。
何で俺まで応援されてるんだよ。意味がわからん。
「こらこら、蒼輝くーん。せっかくみんなが応援してくれているんだから、ありがとうの一つも言わないとダメじゃない?」
わざとらしく大きな声で、由が笑いながら俺にスマホを向けてくる。
「は!? いや、」
まぁ、確かに、応援してくれているのに無視は良くない。由のくせに真っ当なこと言いやがる。否定はできない。
俺は歩きながらも後ろを振り向き、「あ、ありがとう、ございます」と、カタコトな感謝を伝えるとすぐに前を向く。
すぐにスマホが顔に近づいてくるから、手で画面を隠した。
こんな恥ずかしいとこ写すんじゃねえ! と叫びたいのを我慢して、たぶん真っ赤になってしまっている自分の顔が写り込まないようにと、必死の抵抗をした。
「じゃあ、まずは影先輩と光先輩の教室に向かいますー!」
そう言って、由は配信をしながら二年生の教室がある二階に向かう。
中庭から昇降口を通って、一番近いのは一階にある一年生の教室なのだが。俺的には、香坂さんを先に連れて行った方が、効率がいい気がするのだけど。
俺が「なんで?」と、口には出さずに疑問な顔をしていると由が笑う。そして、小声で耳打ちしてくる。
「俺の素が出るから、友里は最後でええねん。もうすでについて来とるし」
そう言って俺から離れると、にーっこり笑って「頑張るよ! 蒼輝くんっ」と思いっきり肩を叩かれる。加減の知らない由によろめきながら後ろを見ると、素早く動く影がピタリと止まった。
キャーキャー騒いでいる生徒の死角に、ひっそりと立っているのは、香坂さん!?
ジッと見ている俺に気が付いて、手でオッケーと合図をくれる。
いや、なにが?
「さぁ、首を傾げていないで行こう。蒼輝くん」
由が進み出すから、香坂さんの行動を気にしながらもついてゆくしかない。



