池杉学園GOODグループ

 ようやく落ち着いた由にホッとして時計を見上げれば、朝のホームルームまではあと五分しかない。
 泣き腫らした目由を置いて行ったらまた何か文句を言われそうで、俺だけ立ち上がるわけにもいかず、どうしようもなくなっていると、真心先輩に呼ばれた。

「蒼輝くん」
「は、はい」
「由くんのこと、同級生としてよろしくお願いします。この子、ほんっとダメな子なんだよね。親や大人は甘いし学園の生徒もほとんどが由の本当の正体を知らない。だから、僕ら生徒会のメンバーが由くんのことを成長させていくためのGOODグループとして、活動していくことになるんだ。学校のためとか定性良いことを先生は言うけど、僕は由くんのためだと思っている」
「……由を成長させる……? BUTな由をGOODに……ってこと?」

 頭の中で色々整理するとそんなことを思った。

「あ、それいいじゃん! そうそう、そんな感じ」
「は? え、じゃあ、GOODグループのGOODって、由を良くするためってことなんですか!?」

 え、意味がわからん。

「あ、GOODグループの由来はね、また別にあってねー」

 混乱する俺に真心先輩が言いかけると、始業開始のチャイムがなった。

「あ、まずい。ほら、二人とも教室に戻りな。話はまた放課後にね」

 パチンとウインクを決められて、生徒会室から由と一緒に押し出された。
 静かな廊下の窓から、優しい太陽の光が降り注いでいる。

「俺は負けないからな、蒼輝!」

 静かな廊下に、由の声が響く。そして、どこから出て来たのか、目元をアイスジェルマスクで冷やしている。

「俺は、別に勝ち負けとかこだわらねぇよ。とりあえず、真心先輩の役には立ちたいかな」

 あの人は、たぶん全部を見てくれている。

「……友里がさ」

 歩き出しながら、由が話し始めた。

「俺はレジェンドのことが一番って、言ってたやろ」

 長々と由のことを語っていた香坂さんの言葉を思い出すと、確かにそれは言っていた。

「本当は、真心先輩の方が一番なんよ。あの人ずっと俺のこと見てくれてるし、叱ってくれるし、優しいし、家で何でもかんでもやりたい放題させてくれる親よりも、俺はあの人のこと信頼してんねん。だって、いっくらわるいことしたって、俺の親は怒らへんねん。なんでやねん。俺のことなんか、愛してないんかって、ずっと思ってる……」

 由の横顔を見れば、悔しそうに唇を噛んでいる。怒りよりも悲しみの方が上回っている表情が、見ていてこちらまで心が痛い。
 うちに来た時も、こんな横顔をしていたのを思い出す。