池杉学園GOODグループ

「俺、周りの目が極端に怖いって言うか、トラウマがあって、ヒソヒソされてると気持ち悪くなるんです。昨日の朝はほんと怖くて。だけど、今朝は少し違ったんです。もちろん昨日みたいな感じで周りが俺のことを見ている感覚はあるんですけど、それが怖いんじゃなくて……なんか、恥ずかしいって言うか」

 なんと言ったら良いのか分からずに、俺は言葉に詰まる。感情の説明が難しい。

「なにを照れとんのじゃワレぃ!」

 グルッと椅子が回ったかと思えば、飛んでくる罵声に驚く。

「ああ? 俺より人気もんなって照れとんのか! ファンサービスせんでもキャーキャー言われるってなんやねんっ! ふざけとんのか」

 ついに立ち上がって、由はズカズカと苛立ちながら俺の目の前まで歩いてくる。

「俺と仲良くしとるん見て、みんな勘違いしてるだっけや。俺のが百倍ファン多いねんからな、覚えとけよ! そこんとこ!」

 噛みつく勢いで俺に近づく由を、真心先輩が止めてくれる。

「ほらほら、由くん。落ち着いてー」

 真心先輩の方が由より少し背が低いけれど、力はあるようで、由の肩に手を添えるとそのままストンっとソファーに座らせた。そして、優しく由の背中をさすってあげている。おだやかに微笑む真心先輩は、まるで母親のようだ。

「ごめんねぇ、由くんってわがままなんだよね。まぁ、そこがかわいいってみんなに甘やかされて来てるから、自分では自覚がないんだけど」

 困ったように俺の方を見て笑うと、すぐに由に向き直って、今度はキッと睨む真心先輩。真剣な目をする横顔に、ピリッと空気が張り詰める。

「自分の意思ばかり押し付けるのは良くないことだよ。蒼輝くんだって一生懸命なんだからね」

 強めの口調で言われて、なにも言い返せなくなって言葉に詰まる由が、泣きそうに顔を歪める。

「まずは、蒼輝くんに謝りなさい。数々の暴言を僕は全部見て来たよ。それでも君に楯突くことなく耐えている蒼輝くんは強いと思う。由くんにはない強さだよ。それは十分分かっているんだろ? ちゃんと友達になりたいなら、自分から心を開かないと。由くんなら出来るよ」

 キツかった目元がふんわりとゆるむ。
 すると、突然由が小さな子供みたいに泣き出すから驚いた。

「……ごめん。ごめん……みんなが俺やなくて蒼輝のこと好きになったらって思ったら、なんや悔しくて。だから、負けたくない思って……」

 真心先輩にしがみついて、しゃっくりをあげて泣いている。
 あんなに誰からも好かれて愛されている由なのに、俺ごときに悔しいなんて、そんなのおかしいだろ。強気な七条由は単なる強がりだったのか?
 今まで見て来た七条由という圧倒的存在が、今はただの俺と同じ中学一年生なんだと、思えた瞬間だった。