好奇な目っていうのは、こういうことなのだろうか。
学校に近づくにつれて、周りを歩いている池杉学園の生徒が俺を見ている気がしてならない。自意識過剰なんかじゃない。絶対に見ている。そして、昨日とは明らかに違う雰囲気を感じるのも確かだ。
だって、ここに由はいないのに、由にやっているように、俺に向かって女子が「きゃあ」と悲鳴を上げているから。
気がつかないふりをしてここまで歩いて来たけど、いい加減耐えられなくなってきた。
俺はうつむきっぱなしだった顔をついに上げると、一気に走り出す。
校門を抜け、昇降口で靴を履き替えると、一目散に裏庭へ。そして、生徒会室のある棟の三階を目指す。
「おいー! 開けろやボケェ!」
突如、一番聞きたくない声が聞こえてきて、俺は走っていたスピードをゆるめた。前方、生徒会室の扉の前で激しくノックをしているのは、紛れもなく由だ。
「ねぇ、由くーん、猪突猛進が過ぎるんだよ、君は」
ガチャリとドアが外側に開いて、真心先輩が呆れつつも笑顔で出てくる。そして、すぐ後ろに来ていた俺の存在にも気がついてくれた。
「おはよう。由くん、蒼輝くん」
にっこり笑いかけてくれる真心先輩は、今日も天使みたいにかわいらしい。口には決して出さないけど、心の中で微笑みに癒される。
俺の心の平穏は真心先輩で保たれているのかもしれない。うん、そんな気がしてならない。だから、癒されたくて教室よりも真っ先に生徒会室へやってきたというのに、なんでまたこいつがいるのか。
「締め出してんなや、そんなに俺のことウザいんか!」
「えー、そんなことしてないでしょ。僕は誰よりも由くんのことかわいがってるのになぁ。そんなこと言われたら泣いちゃう」
眉を下げて両手で顔を覆ってしまう真心先輩に、目の前の由はあわてている。
「は!? え、あ、すまん。怒ってんのとちゃうねん。朝から蒼輝にみんながキャーキャー騒ぎよんねん。それ見てたらムカーっきて、真心先輩の顔見て癒されよう思てな、それできたんやけど、扉がまた開かんねんもん!」
駄々をこねる子供の様に、由はジタバタと足踏みをする。そんな由に、真心先輩はため息を吐き出して、それでも笑顔を崩さない。もちろん、その顔に涙なんてない。
「だからね、ちゃんと学習しようね。この扉は押してもダメなの。引いて開くようになっているの。鍵だって外からしか掛けられないから、君を締め出すとかないんだよ。わかった?」
丁寧にゆっくりと真心先輩が由に伝えるが、話を半分聞いたあたりで、もうすでに生徒会室の中に進んで行って当たり前のように背もたれのついた高級椅子に座っている。
「わーかってるって。何回言うねん」
何回も言わせてんのはお前やろがい!!
声には出さないけど、思い切り心の中で叫んでしまう。
「っ、あはは。蒼輝くん、今心の中で由くんにめっちゃツッコミ入れたでしょ?」
声には出ていなくても、顔に思い切り出ていたらしい。真心先輩がケラケラと笑って、俺のことも部屋の中に通してくれる。
「もう、かわいいなぁ、君たちは」
「は!? 俺がかわいいは分かる! なんで蒼輝もやねん! 蒼輝なんかどっこもかわいらしい要素ないやんか」
せっかく真心先輩がかわいいと言ってくれても、それを無かったことにしようとする由の言葉に、そうもはっきり言われると俺だって傷つく。
「どうせ俺はかわいくないよ」
ふんっと膨れて見せると、一瞬静けさが通り過ぎる。
は?
え、いや、まぁ、そんなこと言うキャラじゃないのは分かってるけど、そこまであからさまに静まり返らなくても良くない?
反抗してみてから後悔して視線をあげると、二人とも目を見開いて俺を見ている。
「蒼輝!」
「蒼輝くん!」
ほぼ同時に二人に呼ばれて、なぜか姿勢を正して真っ直ぐに立った。
「な、なに……」
「素直になれてるー!」
「なに、一日で心開いとんねんっ!」
なぜか真心先輩が喜び、由は平常運転で怒っている。
「え、待って。由くん、蒼輝くんとなんかあった!?」
「は? なんもないわ!」
「昨日帰りに校門前でなんか二人騒いでなかった?」
「は!? んだよ、見んなや!」
「学園内から出るまでは、GOODメンバーの行動を生徒会長が責任を持って見届けるのは日々の務めだからね」
へぇ、生徒会長の仕事ってそんな事もしてるのか。
「なんもないっ」
頑なに否定する由と、俺の方を見ながら真心先輩が不敵に笑う。
「……だって二人してここに来るとか、なにか良いことがあったからじゃないの? 僕に報告しに来たんでしょう?」
勢いがなくなった由の姿は、図星を突かれたんだなとわかりやすい。俺は報告と言うか、ただ今朝のことに戸惑って、どうしたらいいのか分からなくて相談に来ただけだ。
「蒼輝から話せば?」
由がぶっきらぼうに言うと、椅子をくるりと回して向こうを向いてしまった。
仕方なく、俺は「失礼します」とソファーに座って切り出した。
学校に近づくにつれて、周りを歩いている池杉学園の生徒が俺を見ている気がしてならない。自意識過剰なんかじゃない。絶対に見ている。そして、昨日とは明らかに違う雰囲気を感じるのも確かだ。
だって、ここに由はいないのに、由にやっているように、俺に向かって女子が「きゃあ」と悲鳴を上げているから。
気がつかないふりをしてここまで歩いて来たけど、いい加減耐えられなくなってきた。
俺はうつむきっぱなしだった顔をついに上げると、一気に走り出す。
校門を抜け、昇降口で靴を履き替えると、一目散に裏庭へ。そして、生徒会室のある棟の三階を目指す。
「おいー! 開けろやボケェ!」
突如、一番聞きたくない声が聞こえてきて、俺は走っていたスピードをゆるめた。前方、生徒会室の扉の前で激しくノックをしているのは、紛れもなく由だ。
「ねぇ、由くーん、猪突猛進が過ぎるんだよ、君は」
ガチャリとドアが外側に開いて、真心先輩が呆れつつも笑顔で出てくる。そして、すぐ後ろに来ていた俺の存在にも気がついてくれた。
「おはよう。由くん、蒼輝くん」
にっこり笑いかけてくれる真心先輩は、今日も天使みたいにかわいらしい。口には決して出さないけど、心の中で微笑みに癒される。
俺の心の平穏は真心先輩で保たれているのかもしれない。うん、そんな気がしてならない。だから、癒されたくて教室よりも真っ先に生徒会室へやってきたというのに、なんでまたこいつがいるのか。
「締め出してんなや、そんなに俺のことウザいんか!」
「えー、そんなことしてないでしょ。僕は誰よりも由くんのことかわいがってるのになぁ。そんなこと言われたら泣いちゃう」
眉を下げて両手で顔を覆ってしまう真心先輩に、目の前の由はあわてている。
「は!? え、あ、すまん。怒ってんのとちゃうねん。朝から蒼輝にみんながキャーキャー騒ぎよんねん。それ見てたらムカーっきて、真心先輩の顔見て癒されよう思てな、それできたんやけど、扉がまた開かんねんもん!」
駄々をこねる子供の様に、由はジタバタと足踏みをする。そんな由に、真心先輩はため息を吐き出して、それでも笑顔を崩さない。もちろん、その顔に涙なんてない。
「だからね、ちゃんと学習しようね。この扉は押してもダメなの。引いて開くようになっているの。鍵だって外からしか掛けられないから、君を締め出すとかないんだよ。わかった?」
丁寧にゆっくりと真心先輩が由に伝えるが、話を半分聞いたあたりで、もうすでに生徒会室の中に進んで行って当たり前のように背もたれのついた高級椅子に座っている。
「わーかってるって。何回言うねん」
何回も言わせてんのはお前やろがい!!
声には出さないけど、思い切り心の中で叫んでしまう。
「っ、あはは。蒼輝くん、今心の中で由くんにめっちゃツッコミ入れたでしょ?」
声には出ていなくても、顔に思い切り出ていたらしい。真心先輩がケラケラと笑って、俺のことも部屋の中に通してくれる。
「もう、かわいいなぁ、君たちは」
「は!? 俺がかわいいは分かる! なんで蒼輝もやねん! 蒼輝なんかどっこもかわいらしい要素ないやんか」
せっかく真心先輩がかわいいと言ってくれても、それを無かったことにしようとする由の言葉に、そうもはっきり言われると俺だって傷つく。
「どうせ俺はかわいくないよ」
ふんっと膨れて見せると、一瞬静けさが通り過ぎる。
は?
え、いや、まぁ、そんなこと言うキャラじゃないのは分かってるけど、そこまであからさまに静まり返らなくても良くない?
反抗してみてから後悔して視線をあげると、二人とも目を見開いて俺を見ている。
「蒼輝!」
「蒼輝くん!」
ほぼ同時に二人に呼ばれて、なぜか姿勢を正して真っ直ぐに立った。
「な、なに……」
「素直になれてるー!」
「なに、一日で心開いとんねんっ!」
なぜか真心先輩が喜び、由は平常運転で怒っている。
「え、待って。由くん、蒼輝くんとなんかあった!?」
「は? なんもないわ!」
「昨日帰りに校門前でなんか二人騒いでなかった?」
「は!? んだよ、見んなや!」
「学園内から出るまでは、GOODメンバーの行動を生徒会長が責任を持って見届けるのは日々の務めだからね」
へぇ、生徒会長の仕事ってそんな事もしてるのか。
「なんもないっ」
頑なに否定する由と、俺の方を見ながら真心先輩が不敵に笑う。
「……だって二人してここに来るとか、なにか良いことがあったからじゃないの? 僕に報告しに来たんでしょう?」
勢いがなくなった由の姿は、図星を突かれたんだなとわかりやすい。俺は報告と言うか、ただ今朝のことに戸惑って、どうしたらいいのか分からなくて相談に来ただけだ。
「蒼輝から話せば?」
由がぶっきらぼうに言うと、椅子をくるりと回して向こうを向いてしまった。
仕方なく、俺は「失礼します」とソファーに座って切り出した。



