まっすぐに伸びた廊下の突き当たりには、なにやら重厚で立派な扉が設置されている。まさかとは思いつつ、ゆっくり足を進めると大きな観音開きの扉には、【生徒会室】とこれまた立派なプレートに金字で書かれている。
「ここが、生徒会室……?」
俺が受験した池杉学園中等部は、ごく普通の中学校だと思っていた。
歴史ある学園ではあるけれど、この辺りに住む子供は当たり前のように初等部から通っていて、高等部までエスカレーター式で上がって行く。かと言って、地元の生徒だけを待遇するわけじゃなく、他の小学校からの受験も受け入れている。だから、そこまで格式やコネや親の七光が必要だなんて話もほとんどない。敷居も決して高くない。
だからこそ、それを知った俺は、地元から一番遠くて知り合いのいない自分の学力に見合ったこの学校を一般受験した。
新入生代表は、たまたま入試で満点を取れただけだ。勉強は嫌いじゃないし、むしろ好きだ。
だって、テストは裏切ったり嘘をついたりしない……。
つい、小学校の時の嫌な思い出が頭の中にジワリと浮かびそうになって、俺はかき消すように首を振った。
もう二度とあんな思いはしたくない。
俺はこの学園で新しい学校生活を楽しむんだ。
「おいー、なにさっきからずっと突っ立ってんねーん。どつくぞ、オラ」
いきなり、ドスの効いた低い声が背後から聞こえてきて、ゾクリと全身が寒くなる。振り向いたら殺されるんじゃないかと思うくらいの恐怖を感じた。
「ドアの開け方知らんのか、ワレ」
すぐ隣までやってきた声。
そして、俺の顔の横に伸びてくる腕が、扉を力強く押した。
「……あ? なんやこれ、開かへんな」
ものすごい力に見えたのに、扉はびくともしない。おそるおそる横を見れば、こちらも鼻の高い端正な顔立ちのイケメン。喋らなければ国宝級。なんて見惚れてしまっていると、一気に彼の顔色が歪んで黒くなっていく。
「おいー! 開けろやボケ会長がぁ!」
ガンガンと破壊しそうな勢いでドアを拳で殴り始めるから、怖くなって俺はそっと後退りをする。
「ねぇ、由くーん。押してダメなら?」
ドアの向こうから、呆れたような高い声が聞こえてくる。
たぶん、さっきいた生徒の声だ。
もしかして、あの人って生徒会長? やっぱり先輩か! と、俺の思考が繋がったと同時に、無闇に叩いていた手がピタリと止まった。考え込むポーズをとったかと思えば、閃いた! と頭の上に光を灯したように見えた彼の顔は、ニヤリと笑みを浮かべている。
「引いてみな。やったっけ?」
そう言いながらドアを引くと、すんなり開いた。
悪びれた様子もなく笑って中へ入っていく彼を見て、俺は唖然としてしまう。口が開きっぱなしになっていることに気が付いて、ハッとする。そして、ドアを開いて出てきた生徒が苦笑いをしている。
「アホでしょ? 由くんって」
なんの遠慮もなく笑っている先輩が、さっきの暴力男に勢いよく殴られるんじゃないかとハラハラしてしまう。
心配したのも束の間、扉が開いたことに機嫌をよくしたのか、「そうやった、そうやったー!」と、もうすでに室内でくつろぎ始めているから、怖い彼の姿はもうない。
だからって、『アホでしょ?』の言葉に同意するわけにもいかず、俺は心の中で『アホすぎるんだよ!』と叫ぶにとどめた。
「中にどうぞ。あ、大丈夫だよ。今のは毎回のことだから、そのうち慣れるよ」
にっこり笑う先輩の顔はとても親しみやすくかわいらしいが、一連のことを見てきてからだと少々うさん臭さも感じる。
一体、俺はここへ来てどうなってしまうのか。心の中は不安でいっぱいになっていた。
しかも、足を踏み入れた生徒会室の中には、すでに数人の生徒がいる。
いやいやいや、意味がわからない。
だれ? この人たち、だれなんですか?
現状が受け止めきれずに、脳内はパニックを起こしている。
流されるように生徒会室に入った俺は、目の前にいる個性豊かな生徒数人を、ぐるりと見渡して、なんとか落ち着いたフリをした。
「ここが、生徒会室……?」
俺が受験した池杉学園中等部は、ごく普通の中学校だと思っていた。
歴史ある学園ではあるけれど、この辺りに住む子供は当たり前のように初等部から通っていて、高等部までエスカレーター式で上がって行く。かと言って、地元の生徒だけを待遇するわけじゃなく、他の小学校からの受験も受け入れている。だから、そこまで格式やコネや親の七光が必要だなんて話もほとんどない。敷居も決して高くない。
だからこそ、それを知った俺は、地元から一番遠くて知り合いのいない自分の学力に見合ったこの学校を一般受験した。
新入生代表は、たまたま入試で満点を取れただけだ。勉強は嫌いじゃないし、むしろ好きだ。
だって、テストは裏切ったり嘘をついたりしない……。
つい、小学校の時の嫌な思い出が頭の中にジワリと浮かびそうになって、俺はかき消すように首を振った。
もう二度とあんな思いはしたくない。
俺はこの学園で新しい学校生活を楽しむんだ。
「おいー、なにさっきからずっと突っ立ってんねーん。どつくぞ、オラ」
いきなり、ドスの効いた低い声が背後から聞こえてきて、ゾクリと全身が寒くなる。振り向いたら殺されるんじゃないかと思うくらいの恐怖を感じた。
「ドアの開け方知らんのか、ワレ」
すぐ隣までやってきた声。
そして、俺の顔の横に伸びてくる腕が、扉を力強く押した。
「……あ? なんやこれ、開かへんな」
ものすごい力に見えたのに、扉はびくともしない。おそるおそる横を見れば、こちらも鼻の高い端正な顔立ちのイケメン。喋らなければ国宝級。なんて見惚れてしまっていると、一気に彼の顔色が歪んで黒くなっていく。
「おいー! 開けろやボケ会長がぁ!」
ガンガンと破壊しそうな勢いでドアを拳で殴り始めるから、怖くなって俺はそっと後退りをする。
「ねぇ、由くーん。押してダメなら?」
ドアの向こうから、呆れたような高い声が聞こえてくる。
たぶん、さっきいた生徒の声だ。
もしかして、あの人って生徒会長? やっぱり先輩か! と、俺の思考が繋がったと同時に、無闇に叩いていた手がピタリと止まった。考え込むポーズをとったかと思えば、閃いた! と頭の上に光を灯したように見えた彼の顔は、ニヤリと笑みを浮かべている。
「引いてみな。やったっけ?」
そう言いながらドアを引くと、すんなり開いた。
悪びれた様子もなく笑って中へ入っていく彼を見て、俺は唖然としてしまう。口が開きっぱなしになっていることに気が付いて、ハッとする。そして、ドアを開いて出てきた生徒が苦笑いをしている。
「アホでしょ? 由くんって」
なんの遠慮もなく笑っている先輩が、さっきの暴力男に勢いよく殴られるんじゃないかとハラハラしてしまう。
心配したのも束の間、扉が開いたことに機嫌をよくしたのか、「そうやった、そうやったー!」と、もうすでに室内でくつろぎ始めているから、怖い彼の姿はもうない。
だからって、『アホでしょ?』の言葉に同意するわけにもいかず、俺は心の中で『アホすぎるんだよ!』と叫ぶにとどめた。
「中にどうぞ。あ、大丈夫だよ。今のは毎回のことだから、そのうち慣れるよ」
にっこり笑う先輩の顔はとても親しみやすくかわいらしいが、一連のことを見てきてからだと少々うさん臭さも感じる。
一体、俺はここへ来てどうなってしまうのか。心の中は不安でいっぱいになっていた。
しかも、足を踏み入れた生徒会室の中には、すでに数人の生徒がいる。
いやいやいや、意味がわからない。
だれ? この人たち、だれなんですか?
現状が受け止めきれずに、脳内はパニックを起こしている。
流されるように生徒会室に入った俺は、目の前にいる個性豊かな生徒数人を、ぐるりと見渡して、なんとか落ち着いたフリをした。



