「あー、かまへんかまへん。そんなん全然大丈夫やで」
余裕そうに笑う七条由だけど、俺の方が気が気じゃない。だって、もしまた前みたいなことが始まったら、そんなことになったら、俺は耐えられない。
画面に検索結果が出てくる。
七条由に関しての投稿は結構な数ある。最新の中に、さっきの女子のアカウントらしきものを見つけた。
》池杉学園の七条由、最悪、変な関西弁で睨んできたんだけどー
でも顔かっこよすぎた♡
「ほら、変な関西弁って書かれてる! これ絶対やばい」
あわててコメント欄を開いてみるけど、不思議なことに賛同する意見が一つもない。それどころか、批判するような言葉ばかりが寄せられている。
七条由様呼び捨てにすんな
お前が最悪だよ
でもとかなに様?
溢れてくる返信に、きっと怖くなったのか、今はコメント欄が閉じられてしまっている。
「なんもヤバくないで。そう言うん気にする方がヤバい。なぁ、工藤蒼輝はあいつらに何されよったん?」
ギラリと瞳が光った気がして、背筋が冷える。
話したところで何になる。そうは思っても、話さなきゃいけない雰囲気を感じて、腹を括った。
「……小学校のとき、いじめられてたんだよ。俺」
一瞬の間があって、七条由が目を見開く。
「え、マジか」
「マジだよ。クラスみんなから一斉無視。話せば喋るなって言われるし、存在がキモいとか、理由もなく。些細なことがきっかけで嫌われ者になっていった。別に俺はそれでも勉強さえしていれば、こんな奴らとは違う別の場所に行けるだろうって、そう信じて池杉学園を選んだんだ。家からも出て、まったく新しい環境で生きていくって決めたのに、まだ俺の周りには過去がつきまとってくる」
この世界に逃げ場なんかどこにもないのかもしれない。
「嫌なことから逃げてきたんだ、俺は。学校も家も全部要らないって思って。だから、また同じ道を辿るのだけは絶対に嫌なんだよ」
俺は一人でなんだって出来るから。誰にも頼らないでやってやるって、気合いだけは入れてきた。でも、本当にそんなことが出来るのかなって、不安でしかたがない。
だからって誰も助けてなんかくれない。友達はいないし、親だって俺は一人でやれるだろうって思っている。
「おいー、鳴ってんで、さっきから」
「……え」
つい、また色んなことを考えすぎていた。七条由に呼ばれて、ハッとする。
テーブルの上に置いていたスマホが震えていた。着信を見て、驚く。
「……母さん?」
着信画面には母と表示されている。じっとこちらを見る七条由を一度チラリと見てから、電話に出た。
「も、もしもし?」
『あー、蒼輝やっと出た! ねぇ、今日学校で倒れたんだって? 先生から連絡が来てびっくりしたよ。慣れないところ行って大変なんじゃない? 大丈夫なの?』
一気に母さんがしゃべりだすから、俺は驚いて言葉が出てこない。心配している声に、ますます動揺してしまう。だって、母さんは弟たちで手一杯だし、俺のことなんてかまわないと思っていたから。こんな風に連絡をくれるとか、ないと思っていた。
「え、全然大丈夫、だよ」
あわてる母さんに、俺は一言だけ。
『もう。蒼輝はいっつもそう言うんだから。倒れるなんて大丈夫じゃないでしょう。おばあちゃんにも連絡しておいたから、無理はしないでね。今日は早く休むのよ』
「うん。分かった」
『あんまりしんどい時は帰っておいで。まぁ、こっちだとチビ達がうるさくって休めたりはしないだろうけど』
あははと笑いながらも、母さんの声がまだ心配そうだ。俺はもう一度「大丈夫だよ」と伝える。
声を聞いただけなのに、心の中があたたかくなる。母さんの存在って、やっぱりなんか特別だ。俺のことなんて考えてなんていないと思っていたのに。ちゃんと、心配してくれている。それが、すごく、嬉しいって思った。
『おじいちゃんおばあちゃんにあまり心配かけないようにね。無理するのはわがまま言うよりも心配になるんだから、ちゃんと自分の気持ち伝えなさいね』
「……うん。分かった」
自分の気持ちを伝える。俺が苦手なこと。
思っていても言わなかったり、言えなかったり。言えたとしても、言わなきゃよかったって、いつも後悔していた。
「なぁ蒼輝、俺とトップになろうや」
「……は?」
通話を終えるまで静かに待っていてくれた七条由が突然俺に詰め寄る。
余裕そうに笑う七条由だけど、俺の方が気が気じゃない。だって、もしまた前みたいなことが始まったら、そんなことになったら、俺は耐えられない。
画面に検索結果が出てくる。
七条由に関しての投稿は結構な数ある。最新の中に、さっきの女子のアカウントらしきものを見つけた。
》池杉学園の七条由、最悪、変な関西弁で睨んできたんだけどー
でも顔かっこよすぎた♡
「ほら、変な関西弁って書かれてる! これ絶対やばい」
あわててコメント欄を開いてみるけど、不思議なことに賛同する意見が一つもない。それどころか、批判するような言葉ばかりが寄せられている。
七条由様呼び捨てにすんな
お前が最悪だよ
でもとかなに様?
溢れてくる返信に、きっと怖くなったのか、今はコメント欄が閉じられてしまっている。
「なんもヤバくないで。そう言うん気にする方がヤバい。なぁ、工藤蒼輝はあいつらに何されよったん?」
ギラリと瞳が光った気がして、背筋が冷える。
話したところで何になる。そうは思っても、話さなきゃいけない雰囲気を感じて、腹を括った。
「……小学校のとき、いじめられてたんだよ。俺」
一瞬の間があって、七条由が目を見開く。
「え、マジか」
「マジだよ。クラスみんなから一斉無視。話せば喋るなって言われるし、存在がキモいとか、理由もなく。些細なことがきっかけで嫌われ者になっていった。別に俺はそれでも勉強さえしていれば、こんな奴らとは違う別の場所に行けるだろうって、そう信じて池杉学園を選んだんだ。家からも出て、まったく新しい環境で生きていくって決めたのに、まだ俺の周りには過去がつきまとってくる」
この世界に逃げ場なんかどこにもないのかもしれない。
「嫌なことから逃げてきたんだ、俺は。学校も家も全部要らないって思って。だから、また同じ道を辿るのだけは絶対に嫌なんだよ」
俺は一人でなんだって出来るから。誰にも頼らないでやってやるって、気合いだけは入れてきた。でも、本当にそんなことが出来るのかなって、不安でしかたがない。
だからって誰も助けてなんかくれない。友達はいないし、親だって俺は一人でやれるだろうって思っている。
「おいー、鳴ってんで、さっきから」
「……え」
つい、また色んなことを考えすぎていた。七条由に呼ばれて、ハッとする。
テーブルの上に置いていたスマホが震えていた。着信を見て、驚く。
「……母さん?」
着信画面には母と表示されている。じっとこちらを見る七条由を一度チラリと見てから、電話に出た。
「も、もしもし?」
『あー、蒼輝やっと出た! ねぇ、今日学校で倒れたんだって? 先生から連絡が来てびっくりしたよ。慣れないところ行って大変なんじゃない? 大丈夫なの?』
一気に母さんがしゃべりだすから、俺は驚いて言葉が出てこない。心配している声に、ますます動揺してしまう。だって、母さんは弟たちで手一杯だし、俺のことなんてかまわないと思っていたから。こんな風に連絡をくれるとか、ないと思っていた。
「え、全然大丈夫、だよ」
あわてる母さんに、俺は一言だけ。
『もう。蒼輝はいっつもそう言うんだから。倒れるなんて大丈夫じゃないでしょう。おばあちゃんにも連絡しておいたから、無理はしないでね。今日は早く休むのよ』
「うん。分かった」
『あんまりしんどい時は帰っておいで。まぁ、こっちだとチビ達がうるさくって休めたりはしないだろうけど』
あははと笑いながらも、母さんの声がまだ心配そうだ。俺はもう一度「大丈夫だよ」と伝える。
声を聞いただけなのに、心の中があたたかくなる。母さんの存在って、やっぱりなんか特別だ。俺のことなんて考えてなんていないと思っていたのに。ちゃんと、心配してくれている。それが、すごく、嬉しいって思った。
『おじいちゃんおばあちゃんにあまり心配かけないようにね。無理するのはわがまま言うよりも心配になるんだから、ちゃんと自分の気持ち伝えなさいね』
「……うん。分かった」
自分の気持ちを伝える。俺が苦手なこと。
思っていても言わなかったり、言えなかったり。言えたとしても、言わなきゃよかったって、いつも後悔していた。
「なぁ蒼輝、俺とトップになろうや」
「……は?」
通話を終えるまで静かに待っていてくれた七条由が突然俺に詰め寄る。



