小学校のころ、俺には友達がいなかった。
家でテレビは子供向けばかり、音楽だって幼児向け。おもちゃに囲まれて環境は常に保育園。流行りになんて乗れなかったし、同級生との会話は噛み合わなくて、話していてもつまらないと言われた。俺だってみんながなんのことを言っているのか分からなくて、つまらなかった。
サッカーをすればいい感じに活躍出来たのに、俺ばかりがゴールを決めてまたつまらないと言われる。上手い自覚はあってもサッカーを習うまではしたくなくて、習っていても俺に敵わない子達からは嫌味を言われるようになった。
全てにおいて、うまくいかない。
友達なんかいらない。
勉強だけが俺の唯一の向き合って結果が出て褒められる手段だった。良ければ褒められるし、良くなかったら別に何も言われない。また頑張って良くするだけ。
人と関わるとか面倒なだけだし、友達なんて俺はいらない。
「ねぇ、蒼輝くん」
「……え」
過去のことを思い返して嫌な気持ちになってしまった俺は、真心先輩に呼ばれて顔を上げた。
「変な生徒会でごめんね。呆れられちゃうのも分かるよ。だって森谷先生がこんなだから、仕方ないし」
いつの間にか、森谷先生の頭には『GOODグループLOVE』と書かれたハチマキが巻かれ、両手には『由推し!』と『GOODグループ最高!』と書かれたキラキラのうちわを持っている。あげく、斜めにかけた透明バックには、GOODグループ全員の手作りぬいぐるみが綺麗に並んで入っていた。
え、これってオタクってやつ?
唖然とする俺に、善先輩があはははっと笑っている。
「引いてるー! 蒼輝マジで引いてるし!」
そりゃそうでしょう、こんな先生の姿見せられて、引かない方がおかしいだろ!
「これ見て分かる通り、先生はめちゃくちゃ俺らのこと推してくれてるんだよ。誰よりも、愛してくれてる」
「……愛……」
「丸投げしてるように見えるけど、全部先生が責任もって俺たちの行動を見守ってくれるし、間違ったらちゃんと叱ってくれる。だから、今は半信半疑かもしれないけど、協力してくれないか、池杉学園のために」
真っ直ぐに、ゆるぎなく見つめられて、真心先輩の真剣さが伝わってくる。俺は小さく息を吐き出してから真心先輩に目線を合わせた。
「先輩たちや先生が真剣なことは分かりましたけど、七条由がどうなのか。そもそも、俺あの人怖すぎるんですが。友達とか絶対に無理です」
香坂さんが友達になるならまた話は別だけど、あんな情のかけらもない野蛮なやつと友達とか、一生かけても嫌だ。
俺にだって友達を選ぶ権利くらいあるはずだ。
「由くんって、友里ちゃんの言う通りかわいそうなんだよ」
「……え?」
「きっと、話してみれば分かると思う。第一印象最悪かもだけど、由くんがみんなに愛されてる理由は、これからの生活の中で分かってくると思うから。そして、由くん自身も本当の自分を知る友達がいるってことが、彼にとって力になるってことを知ってほしいんだ。どうか、前向きに考えてほしい」
真心先輩と善先輩が並んで頭を下げる。その隣で、森谷先生も「頼む」とオタクグッズ全開で頭を下げるから、大きなため息を吐き出しつつ、俺は「分かりました」とうなずいた。
家でテレビは子供向けばかり、音楽だって幼児向け。おもちゃに囲まれて環境は常に保育園。流行りになんて乗れなかったし、同級生との会話は噛み合わなくて、話していてもつまらないと言われた。俺だってみんながなんのことを言っているのか分からなくて、つまらなかった。
サッカーをすればいい感じに活躍出来たのに、俺ばかりがゴールを決めてまたつまらないと言われる。上手い自覚はあってもサッカーを習うまではしたくなくて、習っていても俺に敵わない子達からは嫌味を言われるようになった。
全てにおいて、うまくいかない。
友達なんかいらない。
勉強だけが俺の唯一の向き合って結果が出て褒められる手段だった。良ければ褒められるし、良くなかったら別に何も言われない。また頑張って良くするだけ。
人と関わるとか面倒なだけだし、友達なんて俺はいらない。
「ねぇ、蒼輝くん」
「……え」
過去のことを思い返して嫌な気持ちになってしまった俺は、真心先輩に呼ばれて顔を上げた。
「変な生徒会でごめんね。呆れられちゃうのも分かるよ。だって森谷先生がこんなだから、仕方ないし」
いつの間にか、森谷先生の頭には『GOODグループLOVE』と書かれたハチマキが巻かれ、両手には『由推し!』と『GOODグループ最高!』と書かれたキラキラのうちわを持っている。あげく、斜めにかけた透明バックには、GOODグループ全員の手作りぬいぐるみが綺麗に並んで入っていた。
え、これってオタクってやつ?
唖然とする俺に、善先輩があはははっと笑っている。
「引いてるー! 蒼輝マジで引いてるし!」
そりゃそうでしょう、こんな先生の姿見せられて、引かない方がおかしいだろ!
「これ見て分かる通り、先生はめちゃくちゃ俺らのこと推してくれてるんだよ。誰よりも、愛してくれてる」
「……愛……」
「丸投げしてるように見えるけど、全部先生が責任もって俺たちの行動を見守ってくれるし、間違ったらちゃんと叱ってくれる。だから、今は半信半疑かもしれないけど、協力してくれないか、池杉学園のために」
真っ直ぐに、ゆるぎなく見つめられて、真心先輩の真剣さが伝わってくる。俺は小さく息を吐き出してから真心先輩に目線を合わせた。
「先輩たちや先生が真剣なことは分かりましたけど、七条由がどうなのか。そもそも、俺あの人怖すぎるんですが。友達とか絶対に無理です」
香坂さんが友達になるならまた話は別だけど、あんな情のかけらもない野蛮なやつと友達とか、一生かけても嫌だ。
俺にだって友達を選ぶ権利くらいあるはずだ。
「由くんって、友里ちゃんの言う通りかわいそうなんだよ」
「……え?」
「きっと、話してみれば分かると思う。第一印象最悪かもだけど、由くんがみんなに愛されてる理由は、これからの生活の中で分かってくると思うから。そして、由くん自身も本当の自分を知る友達がいるってことが、彼にとって力になるってことを知ってほしいんだ。どうか、前向きに考えてほしい」
真心先輩と善先輩が並んで頭を下げる。その隣で、森谷先生も「頼む」とオタクグッズ全開で頭を下げるから、大きなため息を吐き出しつつ、俺は「分かりました」とうなずいた。



