池杉学園GOODグループ

 鬼の形相のままの七条由は、その場から近寄ってくることはない。たぶん、と言うか香坂さんが今言ったことが全部本当のことだからだ。
 だって、幼なじみが嘘をつくはずがないし、七条由のお目付役として任命されている点を考えると、誰よりも彼を理解しているのは、きっと彼女、香坂友里なんだと思うから。

 そして、きっとこれまでのストレスや不満が巨大に溜まっていたのだろう。香坂さんはあの後くどい程に七条由の本性を暴露し始めた。
 先輩も先生も手に負えないと言った顔をしていて、誰も止めることをしないから、俺もただただ聞いているしかなかった。

『マジで、甘っ甘に甘やかされて育ってきたおぼっちゃまなの、由くんは。一人っ子だし、勉強は嫌いでも大人には聞き分け良かったり、空気読む能力抜群だったり、あ、目上の人に対してだけね。なんかあってもにっこり笑っとけば大抵のことが許される。いや、許されてたまるかぁ!! でもね、長年池杉学園で作り込んできた七条由という嘘で塗り固められた人格をみんなは愛しているし愛でているの。めっちゃ厄介! みんなの理想の七条由にするためには、彼に大人になってもらうしか、もう道はないのよ。大丈夫、まだ間に合うはず。諦めかけ……いやほぼもう完全に諦めていたところに、初代レジェンド生徒会長の孫が入学してくるって言うじゃない? 由くんが誰よりも尊敬、崇拝しているのは、先輩でも親でもなく、初代レジェンド生徒会長白馬庵治様なのよ! だから、工藤くん! あなたの力が必要なの!』

 そうして熱弁を繰り広げた香坂さんは、体力の限界が来たのか生徒会室から出て行ってしまった。
 追いかけるべきか否か迷ったが、七条由が数分後にようやく猛スピードで追いかけて行ったから、俺はこの場にとどまった。

「まぁ、話を要約すると、七条くんと友達になって勉強教えてあげてほしいってことかな」

 あははと笑いながら森谷先生は話をまとめようとする。
 香坂さんの熱意に比べると、かなり簡単に要約したなと、俺は森谷先生に呆れた目を向けるしかない。
 友達になんてなりたくないのですが。
 勉強教えるとか無理すぎますが。
 全部を否定したくなる思いを、俺は口に出来ずにいる。