家族でバーベキュー

俺と妻と、五歳の息子の家族三人。車に乗って、近所の河原にやってきた。
今からここでバーベキューだ。この日のために、肉だけでなく炭まで用意した。

季節外れのためか俺たち以外には誰もいなかったけど、邪魔されることなくできるならその方がいい。

焼きあがった肉に、息子は大喜びだ。最近、こんな豪勢なもの食べていなかったからな。
肉はたくさんあるから、好きなだけ食えよ。

「悪いな。あれだけ用意するの、大変だっただろう」

肉の用意は、妻の担当だ。
けど恥ずかしながら、今の我が家の収入では、こんなにたくさんの肉を買うのも一苦労。家計をやりくりしてなんとか金を捻り出してくれた妻には感謝しかない。

「なに言ってるのよ。こんな時くらい、思い切って贅沢しなきゃ」

そう言って笑う妻。俺も、それにつられて笑顔を作る。

実は、妻が用意した肉は思いの外多くて、全部食べるのに苦労したけど、とっておいてもしょうがない。
バーベキューが終わった頃には、息子ははしゃぎ疲れたのか、いつの間にか眠っていた。

そんな息子を、妻が抱きかかえる。

「あなた。先に車に入っておくわね」
「ああ。片付けが終わったら、俺も車に戻るよ」

息子を妻に任せて、後片付け開始。ゴミやバーベキューでは使わなかった炭などをまとめ終えると、それらを持って車の中に入る。

「火はちゃんと消した?」
「ああ。しっかり確認したさ」

バーベキューの後、火の不始末によって家事になった例もあるからな。
最後の最後に人様に迷惑をかけては大変だ。その辺はしっかりしなければ。

「それじゃあ、そろそろいくか」

俺はそう言うと、煙の出ている炭を見ながら、車のドアを閉めた。








【解説】

火は消したと言っているのに、最後の一文では、炭から煙が出ている。
実は最後に出てきた炭はバーベキューに使ったのとは別のもので、車の中で火をつけたもの。
この家族、練炭自殺で一家心中しようとしていて、バーベキューは死ぬ前の最後の思い出にとやったものだった。