六畳一間のワンルームは、静まり返っていた。
脱ぎっぱなしの服が床に落ち、コンビニ弁当の空容器が傾いたまま乾いている。転がったペットボトルが、かすかに光を反射していた。机の上には、開封されない履歴書の封筒。飲みかけの睡眠薬の箱。空になった薬袋。
換気扇の低い唸りだけが、部屋の空気をゆっくりとかき回している。
カーテンは半端に閉じられ、隙間から街灯の白い光が差し込んでいた。その光は、まるで誰かの目みたいに、部屋の隅をじっと見つめている。
未央は机に座っていた。
指先で、処方薬のシートを一枚ずつ弾く。
ぷち、と乾いた音がして、白い錠剤が小皿に落ちる。
ぷち。
ぷち。
ぷち。
その単調な音に合わせるように、未央は小さく鼻歌をうたっていた。
明るいメロディ。
けれど、ところどころ音が途切れる。
皿の中に白が積もっていく。
未央はそれを両手で包み込んだ。
少しだけ、震えている。
それでも口元には、うっすらと笑みが浮かんでいた。
まるで、これから楽しいことが始まるみたいに。
ひとつ。
またひとつ。
唇に吸い込まれていく白。
ペットボトルの水で流し込む。
喉が、ごくりと鳴る。
静かな部屋に、その音だけが響いた。
未央「なんであたしだけ……」
声は、空気に溶けて消える。
皿は空になった。
笑みが消えた。
視界が揺れる。
胸の奥から、何かがせり上がってくる。
未央「……普通に、生きたかったのに」
涙が、ぽたりと机に落ちる。
普通って、なんだろう。
忘れ物をしないこと?
怒られないこと?
ちゃんと働けること?
みんなが当たり前にやっていることが、どうして自分にはできないのか。
鼻歌は、もう止まっていた。
代わりに嗚咽がこぼれる。
机に突っ伏す。
視界が滲む。
換気扇の音が遠くなる。
光が、滲んで、溶けていく。
真っ白だった。
何もかも。
脱ぎっぱなしの服が床に落ち、コンビニ弁当の空容器が傾いたまま乾いている。転がったペットボトルが、かすかに光を反射していた。机の上には、開封されない履歴書の封筒。飲みかけの睡眠薬の箱。空になった薬袋。
換気扇の低い唸りだけが、部屋の空気をゆっくりとかき回している。
カーテンは半端に閉じられ、隙間から街灯の白い光が差し込んでいた。その光は、まるで誰かの目みたいに、部屋の隅をじっと見つめている。
未央は机に座っていた。
指先で、処方薬のシートを一枚ずつ弾く。
ぷち、と乾いた音がして、白い錠剤が小皿に落ちる。
ぷち。
ぷち。
ぷち。
その単調な音に合わせるように、未央は小さく鼻歌をうたっていた。
明るいメロディ。
けれど、ところどころ音が途切れる。
皿の中に白が積もっていく。
未央はそれを両手で包み込んだ。
少しだけ、震えている。
それでも口元には、うっすらと笑みが浮かんでいた。
まるで、これから楽しいことが始まるみたいに。
ひとつ。
またひとつ。
唇に吸い込まれていく白。
ペットボトルの水で流し込む。
喉が、ごくりと鳴る。
静かな部屋に、その音だけが響いた。
未央「なんであたしだけ……」
声は、空気に溶けて消える。
皿は空になった。
笑みが消えた。
視界が揺れる。
胸の奥から、何かがせり上がってくる。
未央「……普通に、生きたかったのに」
涙が、ぽたりと机に落ちる。
普通って、なんだろう。
忘れ物をしないこと?
怒られないこと?
ちゃんと働けること?
みんなが当たり前にやっていることが、どうして自分にはできないのか。
鼻歌は、もう止まっていた。
代わりに嗚咽がこぼれる。
机に突っ伏す。
視界が滲む。
換気扇の音が遠くなる。
光が、滲んで、溶けていく。
真っ白だった。
何もかも。
