ナンバー2。
店の中では、十分すぎるほどの結果だ。
拍手も、視線も、自然と集まる。
運営からの評価も高い。
後輩たちは、困ったことがあれば俺の席に来る。
「Reyさん、ちょっといいですか」
呼ばれれば、断らない。
自分の手が空いていなくても、
目を見て話を聞く。
焦らせない。
急かさない。
売上より先に、人を見る。
それがReyのやり方だった。
ガツガツした接客はしない。
無理に酒を煽ることもしない。
言葉は少なめで、距離は近すぎない。
悩み相談を徒然と話す客。
止まることない話に頷きながら、話を遮ずに傾聴。
「それは辛いよね…」
「そんな風に考えられるのすごいよ!自分だったらそんなに頑張れなかった。よく頑張ってきたね」
「何があっても僕がそばにいるから、困ったら頼ってね」
俺が彼女にそっと触れると、震えながら涙ぐみ嬉しそうに小さく笑った。
「Rey君、ありがとう。すきぃ」
そうして一通り悩みを言い、解決した彼女はお店を後にするのだ。
そうした繋がりができる客は戻ってくる。
気づけば指名が増え、
いつの間にか、この席に座っていた。
「ナンバー2、さすがですね」
そう言われるたび、
俺は軽く笑って礼を言う。
だが、胸の奥ではいつも、
拍手が少しだけ遠くで鳴っている気がした。
1位の名前は、ほとんど話題に上らない。
誰もが分かっている。
触れないほうがいい“壁”だということを。
俺も、そこを見ようとはしなかった。
この席は、悪くない。
争わなくていい。
奪わなくていい。
ただ、
ここが“ゴール”だとは、思えなかった。
「Rey君って、優しいよね」
客にそう言われることがある。
「ちゃんと話を聞いてくれるし、無理させないし」
その言葉に、
俺は否定も肯定もしない。
優しさは、
最初から持っていたものじゃない。
それを知っているのは、
俺と、もう一人だけだ。
――元カノ。
客として店に来た、
最初の担当だった。
距離が縮まるのは早かった。
連絡を取り合い、
やがて同棲も始めた。
彼女は、よく笑った。
よく泣いた。
そして、よく嘘をついた。
俺のいない夜、
彼女は別のホストと遊んでいた。
それを隠しもせず、
平気な顔で「仕事だよ」と言った。
信じた自分が、
一番滑稽だった。
その痛みが、
人との距離を教えた。
踏み込みすぎないこと。
期待しすぎないこと。
相手を縛らないこと。
それは優しさなんかじゃない。
ただの、自己防衛だ。
それでも――
その距離感が、
この世界では“ちょうどいい”らしい。
だから俺は、
ナンバー2の席にいる。
戦わない。
奪わない。
ただ、求められた分だけ応える。
それで、いい。
……そう、思うようにしている。
席に座り、
グラスを傾ける。
照明の向こうで、
今日も夜は続いていく。
この場所で、
俺はReyとして、
きちんと役を演じている。
本名の麗が、
どこへ行きたいのかを考えないまま。
店の中では、十分すぎるほどの結果だ。
拍手も、視線も、自然と集まる。
運営からの評価も高い。
後輩たちは、困ったことがあれば俺の席に来る。
「Reyさん、ちょっといいですか」
呼ばれれば、断らない。
自分の手が空いていなくても、
目を見て話を聞く。
焦らせない。
急かさない。
売上より先に、人を見る。
それがReyのやり方だった。
ガツガツした接客はしない。
無理に酒を煽ることもしない。
言葉は少なめで、距離は近すぎない。
悩み相談を徒然と話す客。
止まることない話に頷きながら、話を遮ずに傾聴。
「それは辛いよね…」
「そんな風に考えられるのすごいよ!自分だったらそんなに頑張れなかった。よく頑張ってきたね」
「何があっても僕がそばにいるから、困ったら頼ってね」
俺が彼女にそっと触れると、震えながら涙ぐみ嬉しそうに小さく笑った。
「Rey君、ありがとう。すきぃ」
そうして一通り悩みを言い、解決した彼女はお店を後にするのだ。
そうした繋がりができる客は戻ってくる。
気づけば指名が増え、
いつの間にか、この席に座っていた。
「ナンバー2、さすがですね」
そう言われるたび、
俺は軽く笑って礼を言う。
だが、胸の奥ではいつも、
拍手が少しだけ遠くで鳴っている気がした。
1位の名前は、ほとんど話題に上らない。
誰もが分かっている。
触れないほうがいい“壁”だということを。
俺も、そこを見ようとはしなかった。
この席は、悪くない。
争わなくていい。
奪わなくていい。
ただ、
ここが“ゴール”だとは、思えなかった。
「Rey君って、優しいよね」
客にそう言われることがある。
「ちゃんと話を聞いてくれるし、無理させないし」
その言葉に、
俺は否定も肯定もしない。
優しさは、
最初から持っていたものじゃない。
それを知っているのは、
俺と、もう一人だけだ。
――元カノ。
客として店に来た、
最初の担当だった。
距離が縮まるのは早かった。
連絡を取り合い、
やがて同棲も始めた。
彼女は、よく笑った。
よく泣いた。
そして、よく嘘をついた。
俺のいない夜、
彼女は別のホストと遊んでいた。
それを隠しもせず、
平気な顔で「仕事だよ」と言った。
信じた自分が、
一番滑稽だった。
その痛みが、
人との距離を教えた。
踏み込みすぎないこと。
期待しすぎないこと。
相手を縛らないこと。
それは優しさなんかじゃない。
ただの、自己防衛だ。
それでも――
その距離感が、
この世界では“ちょうどいい”らしい。
だから俺は、
ナンバー2の席にいる。
戦わない。
奪わない。
ただ、求められた分だけ応える。
それで、いい。
……そう、思うようにしている。
席に座り、
グラスを傾ける。
照明の向こうで、
今日も夜は続いていく。
この場所で、
俺はReyとして、
きちんと役を演じている。
本名の麗が、
どこへ行きたいのかを考えないまま。



