萌えとネイル

付き合い始めてから、
昼休みは、自然と一緒に過ごすようになった。

特別なことは、
何もしていない。
話さない日もある。

それでも、
同じ空間にいるだけで、
十分だった。

窓際最後列の席。
光が、
机の上に落ちている。

オタクくんは、
ライトノベルを読んでいる。
ページをめくる指先。

静かな時間。
その前の席で、
ギャル子はネイルを整えていた。

小さな瓶。
細い筆。
慣れた手つき。
ふと、
顔を上げる。
目の前には、
本を読むオタクくん。
そして、
その手。
長くて、
まっすぐな指。
何も塗られていない、
素のままの指先。
ギャル子は、
少しだけ笑った。

「ねえ」

オタクくんが、
顔を上げる。

「てかさ」

ギャル子は言った。

「オタクくんて、指綺麗だよね」

一瞬、
間。

「ボクがネイル描いてあげよーか?」

光が、
揺れる。
オタクくんは、
何も言わなかった。

ただ、
手に持っていたライトノベルを、
静かに閉じた。

そして、
机の上に置いた。
ネイルの隣に。
光が、
その上に、
落ちていた。