萌えとネイル

翌日。
昼休み。

教室に戻ると、またギャル子がいた。

そして、オタクくんを見るなり言った。

「今日は何読んでんの?」

驚いた。
自分に話しかけている。

「あ……これです」

本を少し持ち上げて見せる。

「それ、どんな話?」

「えっと……異世界に転生して……」

説明がうまくできない。
言葉が詰まる。
でも、ギャル子は最後まで聞いた。

「ふーん。面白そうじゃん」

笑った。
その日から。
ギャル子は、毎日話しかけてくるようになった。

「今日は何読んでんの?」
「それ、面白い?」
「オタクくんて本ばっか読んでるし、勉強とかできる感じ?」

会話は、いつも短かった。
一言。二言。
それだけ。
でも。
それだけで、十分だった。
女子と話すことなんて、今までほとんどなかった。
ましてや、自分のことを知ろうとする人なんて。
ギャル子は、自分を否定しなかった。
理解しているわけではない。
でも、拒絶もしない。
それだけでよかった。
自分の名前を呼ぶ人間が、ひとり増えた。
それだけで、
世界は少しだけ、
変わった気がした。