ハレノ様にすまほを返却する。
不思議そうにしながらも操作をしたハレノ様。
すぐに「で、電源点いた!」と肩を跳ねさせる。
ああ、よかった。
無事に充電ができたみたい。
「え!? え!? ど、どうしてですか!? 充電器もないのに!?」
「雷の魔力を少しだけ込めましたの。使えるようになりましたか?」
「充電フルマックスになってますよ! すごい! ありがとうございます、ロゼリア先生っ! アリスちゃん、フィアナちゃん! 写真撮ろう!」
ハレノ様が並んだ三人の顔や姿が入るよう、腕を伸ばして調整する。
一度カシャ、という音がしたあと、ユリッシュの方へハレノ様が駆けてきて、スマホの使い方を説明した。
画面のところの下にある丸い赤い部分を押すとしゃしんが撮れるらしい。
「全身撮り終わったら、ユリッシュさんとロゼリア先生も一緒に撮影しましょう!」
「わたくしたちもよろしいの?」
「もちろんですよっ!」
しかし、わたくしとユリッシュが映るなら、誰がしゃしんを撮るのかしら?
ユリッシュと顔を見合わせていると、公爵家のメイドが一人前へ出てきて「わたくしが撮影いたします」と言ってくれた。
そのお言葉に甘えることにして、わたくしとユリッシュもハレノ様とアリス、フィアナと写真を撮ってもらう。
撮影されたものはなんと、そのすまほの中に保存される。
ハレノ様が“あるばむ”というもので見せてもらう。
鮮明に撮影されたものが画面の中に映っている。
「まあ! 本当に姿絵が入っておりますわ! でも、まるで鏡に映っているかのようでもあり……なんて不思議なのでしょう……!」
「本当だー! すごーい!」
「不思議なものがたくさんあるんだねぇ」
「なにを他人事のように言っているの? ユリッシュ。あなた、ハレノ様とともに異世界に行くのでしょう? 今からハレノ様の世界のことを教わっておいた方がよいのでは?」
「確かに」
「え!?」
この場でユリッシュがハレノ様の世界についていくことを知らなかったのはアリスだけらしく、見たこともないほど目を見開いて大声を出す。
あらあら、侯爵家の令嬢がそんなに大きな声を出して。
「アリス、どんなに驚くことがあってもそんな大きな声を出してはダメよ。はしたないわ」
「うわわっ。ご、ごめんなさい、お姉さまっ。で、でも……ユリッシュさん、ハレノちゃんとハレノちゃんの世界に行くんですか?」
「そう」
あっさりとした返事。
ユリッシュにとってはもう決まっていること。
フィアナの方を見て見ると、少しだけ寂しそう。
そうよね、フィアナにとってはたった一人の兄だものね。
あ、そういえば――。
「ハレノ様、そういえば例の水晶は渡されましたの?」
「あ、はい。公爵家にお邪魔した日に」
「なにか起こりまして?」
「はい。わたくし、女神になりました」
わたくしとアリス、そのまましばらく思考が停止する。
なにを言われたのか、脳が理解を拒んだというか。
えっと……えっと……?
「フィアナちゃん、女神に、え?」
「最初から説明していただいてもよろしくて?」
「あ、はい。そうですよね。えっと、三日前――」
ハレノ様とフィアナ、ユリッシュがそれぞれの視点から起こったことについての説明をしてくれた。
それによると、公爵家にやってきてすぐ、ハレノ様がやったことはもちろん公爵家の人々への挨拶。
その最中に『お土産』としてフィアナに例の水晶を手渡したらしい。
そ、そんなあっさりと……。
陛下への報告だけはしたけれど、実物をさらりとフィアナに渡してしまったとは。
そして、受け取ったフィアナは半透明な大人の女性の姿になった。
説明だけだとなんの話だろうと思ったけれど、とりあえず言葉通り“女神”になったのだという。
女神の生まれ変わり――肉体に、女神の魂――水晶が触れたことで完全覚醒したということ。
つまり、ええと……女神ソアリアが……顕現した、というのとらしい。
「とは言っても、すぐに人間のフィアナに戻ってしまったんです。多分、わたくしが人としての生を終えたら女神に戻るのだと思います」
「まあ……陛下には報告されたのですか?」
「うん。一応」
「どのような返答がきたのですか?」
「うーん、会いに行くべきか、来てもらうべきかを悩んでいるみたいで面会はするけれど父上と日程の調整をしているね。ほら、例の婚約初披露パーティーをいよいよ実現できるでしょ? 元々招待状は来ていたのだけれど、僕らが帰ってきたからそちらの日程調整が優先されているんだよね。多分同日になるんじゃないかな」
「そうなのね……」
確かに国王陛下といえど女神様相手に『会いに来い』とは言えないわよね。
とはいえ、人間フィアナに戻った状態で会いに来て、女神ソアリア様にお会いできなかったら無駄足。
ちなみに女神ソアリア様は今どういう状況なのだろう。
「お呼びすればわたくしの体を使って顕現してくださると思います。お会いになりますか?」
「とんでもない! ご用もないのにお呼び出しなどできないわ」
「まあそんな感じでさ、フィアナはもう……僕がいなくても大丈夫かなって」
振り返る。
ユリッシュが寂しそうな眼差しでフィアナを見下ろしている。
そうね。
バミニオスが消滅した今、女神ソアリア様の肉体となったフィアナを害そうという者はいないだろう。
「わたくしもいるしね」
「うん」



