月が青く染まる夜に

「────分かった。そうだよね、…ごめん」

止めることはできなかった。
ただ、もっと気の利くセリフを思い浮かべられたらよかったのに。

言えなかった。
“無理しないでね”という、たった一言が、喉の奥で固まったままだった。


私は工程表を閉じた。

「…お疲れさまでした。明日、頑張ろう」

もう、彼の顔は見れなかった。
どんな反応をしているのか、見ることもなくコートとバッグを掴んで事務所を出た。


帰り道、冬の空気がやけに冷たかった。
白い息が、綺麗な夜の月を覆うように浮かび上がる。

不安な気持ちにフタをした。