月が青く染まる夜に

会議は予定通り一時間で終わった。

片桐さんが「お疲れ様です」と先に席を立って、会議室を出ていく。他の関係者も同時に席を立つ。

緊張がほぐれて、私はふぅー、と息をついた。

「紗菜さん。資料、ありがとうございました。とても分かりやすくて助かりました」

彼女が出ていってドアが閉まるか閉まらないかのうちに、迅和くんが私の作った資料をぱらぱらとめくった。

「ううん。迅和くんが具体的に指示を出してくれたから」

答えたあたりで、ドアがバタンと閉まる。

会議室には、私と迅和くんだけが残った状態。
静かな空間。
蛍光灯の音がやけに大きい。

資料を揃えながら、迅和くんが呼ぶ。

「紗菜さん」

顔を上げると、彼はこちらを見ていた。

「あの…、たぶん今じゃないとは思うんですが。今回の案件が落ち着いたら」

落ち着いたら?
その続きが、心臓より先に前のめりになる。資料を持つ手に力が入った。

その時、コンコン、というノック音。

ドアが少し開く。

「ごめんなさいね、迅和、ちょっといい?」

出ていったはずの片桐さんが顔を出した。
彼女の視線が、私と迅和くんの間を静かに横切る。

彼はすぐに立ち上がり、どうした?と言いながら会議室を出ていってしまった。


…なにを期待してしまってるんだか。
仕事の話だったかもしれないし。

と、気持ちを切り替えて私も会議室をあとにした。